中部電力の林欣吾社長は5日、名古屋市の本店で臨時記者会見を行い、浜岡原子力発電所の新規制基準への適合性審査を巡り、想定される地震の揺れ(基準地震動)を過小評価していた疑いがあると発表しました。これは再稼働を目指す3、4号機の安全性審査に直結する極めて重要な問題であり、中部電力は社内調査を進めるとともに、原子力規制委員会に詳細を報告する方針を示しています。

浜岡原発は、巨大地震の発生が懸念される東海地震の想定震源域の真上に位置しており、その安全性審査において基準地震動の策定は最も根幹をなすプロセスです。林欣吾社長の説明によりますと、審査会合に向けた資料作成の過程で、地震の揺れの増幅を評価する計算手法やデータの選定において、結果を過小に見積もるような不適切な操作が行われた疑いがあるということです。

原子力規制委員会はこの事態を重く受け止めており、5日に「中部電力が提出した基準地震動の策定に関する資料に不適切行為があった」とする見解を示しました。これを受け、同委員会は7日に開催予定の定例会合において、この問題を議題として取り上げ、今後の審査の進め方や中部電力への対応について本格的な議論を始める予定です。

浜岡原発はこれまで、防潮堤の設置などの対策を進め、2023年には基準地震動について、また2024年には基準津波について規制委員会から「おおむね妥当」との評価を得て、プラント本体の審査へと移行する段階にありました。しかし、今回の疑惑により、前提となっていた地震想定そのものの妥当性が揺らぐこととなりました。もし過小評価が事実として確認されれば、これまでの審査プロセスは白紙に戻る可能性もあり、再稼働のスケジュールには大幅な遅れが生じることが避けられません。

地元である静岡県や周辺自治体からは、電力会社の姿勢を疑問視する声が上がっています。林欣吾社長は会見の中で、「地域の皆様や社会の皆様に多大なご心配とご迷惑をおかけし、深くお詫び申し上げます」と陳謝しました。中部電力は今後、第三者を含む調査体制を構築し、組織的な関与の有無を含めた原因究明に取り組むとしていますが、電力業界全体に対する信頼失墜は免れない情勢です。

今回の事案は、単なる計算ミスではなく、安全性の根幹に関わるデータの信頼性を損なう「不適切事案」として扱われています。規制委員会による厳しい追及が予想される中、中部電力がどこまで透明性のある説明責任を果たせるかが、今後の焦点となります。