今からちょうど20年前の今日、2005年(平成17年)12月10日、マイクロソフトは次世代家庭用ゲーム機「Xbox 360」を日本国内で発売しました。当時のゲーム業界は、ソニー・コンピュータエンタテインメントの「PlayStation 2」が市場を席巻していましたが、マイクロソフトはライバルとなる「PlayStation 3」や任天堂の「Wii」に先駆けて次世代機を投入し、ハイビジョン(HD)画質に対応した「ハイデフ」時代の到来を告げました。あれから20年という月日が流れ、ゲームの映像表現やオンライン環境は劇的な進化を遂げましたが、その基礎の多くはこの時期に築かれたものです。
20年前の発売日当日、東京・渋谷の「SHIBUYA TSUTAYA」周辺は、歴史的な瞬間を目撃しようとするゲームファンや報道陣で早朝から熱気に包まれていました。発売記念イベントには、当時のマイクロソフト会長兼チーフ・ソフトウェア・アーキテクトであったビル・ゲイツや、Xbox事業の日本責任者であった丸山義弘らが姿を見せました。寒空の下で行われたカウントダウンイベントでは、ビル・ゲイツ自らが先頭に並んだ購入者に製品を手渡し、日本市場への並々ならぬ意欲を示した光景は、今も多くのゲームファンの記憶に残っています。
Xbox 360は、初代「Xbox」での苦戦を教訓に、日本の住環境に適した小型で洗練されたデザインを採用していました。ハードウェアとしての機能性も大きく向上し、特に画期的だったのがシステムレベルで統合されたユーザーインターフェースです。ワイヤレスコントローラー中央の「Xbox ガイドボタン」を押すだけで、ゲームを中断することなくフレンドリストの確認やメッセージの送受信が可能となり、快適なプレイ環境を実現しました。
また、ゲーム業界に革命をもたらしたのが「実績(Achievement)」システムの標準搭載です。ゲーム内で特定の条件を満たすとポイントが得られるこの仕組みは、プレイヤーの達成感を可視化し、世界中のユーザーとスコアを競い合う新たな楽しみ方を生み出しました。さらに、PC内の音楽や画像をネットワーク経由で再生できるメディアセンター機能や、ゲーム中に好きな音楽を流せるカスタムサウンドトラック機能など、単なるゲーム機を超えたホームエンターテインメント端末としての側面も強調されていました。
もちろん、現在のオンラインゲームの標準となっているサービス「Xbox Live」の機能も大幅に強化され、ボイスチャットをしながらの協力や対戦を一般的なものにしました。ローンチタイトルには、ナムコの「リッジレーサー6」などが並び、高精細なグラフィックは当時のプレイヤーに大きな衝撃を与えました。標準モデルの価格は3万9795円(税込)でした。
この20年間でゲーム機はさらなる高性能化を遂げましたが、Xbox 360が提示した「HD画質」と「高度なオンライン連携」という方向性は、現代のゲーム体験のスタンダードとして完全に定着しました。日本市場でのシェア獲得には苦戦した側面もありましたが、坂口博信による「ブルードラゴン」などの日本発の大型タイトルの開発を促し、熱心なファンコミュニティを形成した功績は大きく、その遺伝子は現在のXbox Series X/Sへと受け継がれています。
