12月6日は、私たちの生活に欠かせない「音」の歴史において、極めて重要な記念日とされています。1877年(明治10年)のこの日、米国の発明家トーマス・エジソンが、自身が発明した錫(すず)箔の蓄音機「フォノグラフ」を用い、世界で初めて人の声を録音し、そして再生することに成功しました。この偉業にちなみ、日本オーディオ協会によって12月6日は「音の日」と定められています。

エジソンが発明したフォノグラフは、音の振動を針に伝え、回転する円筒に巻かれた錫箔に溝を刻むことで録音を行う仕組みでした。エジソンが最初に吹き込んだ言葉は、童謡の「メリーさんのひつじ(Mary Had a Little Lamb)」の一節であったと伝えられています。彼がハンドルを回して再生した際、自身の声が機械から聞こえてきた瞬間、エジソン自身も「人生でこれほど驚いたことはない」と語ったほど、当時の科学常識を覆す出来事でした。

それまでも音の波形を記録する試みは他の研究者によってなされていましたが、「記録した音を再び音として再生する」ことを実用化したのはエジソンが初めてでした。この発明は、単なる科学的な実験の成功にとどまらず、音楽や言葉を時間と場所を超えて共有することを可能にし、人類の文化形成に多大な影響を与えました。

初期の蓄音機は大型で高価なものでしたが、その後、円盤式のレコードや磁気テープ、そして現代のデジタルデータへと記録媒体は進化を続けてきました。しかし、その原点にあるのは、140年以上前のこの日にエジソンが成功させた「音を刻み、蘇らせる」という技術への挑戦です。

現代ではスマートフォン一つで手軽に音楽を聴き、自身の声を世界中に届けることが可能になりました。12月6日は、先人たちの技術革新に思いを馳せ、私たちが日々享受している「音のある生活」の豊かさを再確認する日と言えるでしょう。