12月7日は「クリスマスツリーの日」として知られています。この記念日は、1886年(明治19年)のこの日、神奈川県横浜市で日本初とされるクリスマスツリーが飾られたことに由来します。

記録によると、横浜・伊勢佐木町に進出していた「明治屋」が、店頭にクリスマスツリーを設置したのが始まりとされています。明治屋は当時、横浜港に寄港する外国人船員や、外国人居留地に住む人々に向けた輸入食品や酒類を取り扱っていました。創業者の磯野計(いその・はかる)は、顧客である外国人たちに故郷の雰囲気を感じてもらい、喜んでもらおうという意図で装飾を施したといいます。当時の日本において、もみの木に飾り付けを行い、ライトを点灯させるという光景は非常に珍しく、地元住民の間でも大きな話題となりました。これが、日本においてクリスマスツリーが一般の人々の目に触れた最初の事例とされ、日本のクリスマス文化定着の契機の一つとなりました。

明治屋によるこの取り組み以降、明治時代後期から大正時代にかけて、百貨店やホテルなどが相次いでクリスマス装飾を取り入れるようになります。当初は「降誕祭」としてキリスト教徒や一部の富裕層、あるいは外国人向けの行事という側面が強かったクリスマスですが、昭和に入ると一般家庭でもケーキを食べたり、子供にプレゼントを贈ったりする習慣が徐々に浸透していきました。戦後、高度経済成長期を迎えると、クリスマスツリーは年末の家庭の団欒を象徴するアイテムとして不動の地位を築きます。

現代においては、11月上旬から街中のイルミネーションや商業施設の巨大ツリーが点灯し始める傾向にありますが、この「12月7日」を境に、家庭内での飾り付けを本格化させる人も少なくありません。また、近年では環境への配慮から、リユース可能な素材を使用したツリーや、LED電球を使用した省エネルギー型のイルミネーションが主流となっています。さらに、欧州発祥のクリスマスマーケットが日本各地で開催されるなど、楽しみ方は多様化していますが、冬の寒空の下で暖かな光を放つツリーが人々の心を和ませるという本質は、明治の時代から変わることなく受け継がれています。