ネット通販の台頭により実店舗の在り方が問われるアパレル業界において、独自の「無人化戦略」と「多角化」で急成長を遂げている企業がある。大阪・浪速区を拠点とする株式会社UPBEARだ。代表取締役の中谷氏は、2030年までに無人洋服屋「RELOOP STORE」を200店舗展開するという壮大な目標を掲げる一方で、その根底には「一人の洋服好き」としての純粋な想いと、現場で培われた人間味溢れる哲学を宿している。
中谷氏の原点は、約8年間にわたるアパレル現場でのキャリアにある。もともと自身が買い物をすること、そして何より洋服が大好きだった。「自分が買い物をするときのワクワク感や、お気に入りの一着を見つけたときの喜びを、今度は提供する側として分かち合いたい」。そんな純粋な動機が、彼をアパレルの世界へと突き動かした。独立直後にコロナ禍という未曾有の危機に直面し、街から人が消えるという絶望的な状況を経験したが、その最悪の時期を生き抜いたことが、今の揺るぎない経営基盤となっている。
中谷氏がこの仕事を通じて最も面白いと感じる瞬間は、売上の数字ではなく、目の前のお客様が「ポジティブに変わっていくプロセス」に立ち会えた時だという。「洋服に興味がなかった方が、洋服の楽しさを知ることで選ぶ服が変わり、髪型や雰囲気、さらには表情まで生き生きと変わっていく。その様子を間近で見られることこそが、この仕事の醍醐味です」と語る。中谷氏にとってファッションとは、トレンドやカルチャーに縛られるものではなく、「自分の気分が上がるものを選ぶ」という直感を信じる、自由で楽しいものであるべきだという強い信念がある。
この「お客様に自由に楽しんでほしい」という想いは、現在注力している無人店舗の運営方針にも色濃く反映されている。中谷氏は、過剰な接客や監視の視線が、時にお客様の「選ぶ楽しさ」を阻害していると考え、あえて誰にも邪魔されずに自分のペースで買い物に集中できる環境を追求した。防犯と売上向上を両立させる理想の接客を「お客様に自由に選んでもらうこと」と定義し、買い物を純粋に楽しんでもらうことが結果として事業の成長に繋がると信じている。
また、経営者としてのマインドセットも、一人のプレーヤーから「仲間に勝たせる」リーダーへと大きく進化した。「自分一人の成果ではなく、関わってくれるスタッフや仲間をビジネスで勝たせ、豊かにしていく。そのコミットメントがなければ組織は続かない」と言い切る。アパレルから美容、飲食へと広がる多角化も、すべては顧客の「あったらいいな」を愚直に追求した結果であり、その本質は常にお客様のお悩み解決にある。
今後の展望として業界No.1を見据える中谷氏は、次世代の若手起業家に対し、「主語を自分ではなくお客様に置き、目の前の人のために何ができるかを追求し続けることが、事業を長く続ける唯一の道」という教訓を贈る。派手な成功を追うのではなく、当たり前のことを積み重ね、日々「+1」を積み上げていくUPBEAR。中谷氏が描く未来は、無人化というテクノロジーの先にある、人が洋服を通じて心からポジティブになれる場所の創造に他ならない。




