舞台や映画、テレビドラマで幅広く活躍した女優の吉行和子(よしゆき・かずこ)さんが、2025年9月2日未明、肺炎のため亡くなっていたことが分かりました。90歳でした。所属事務所が8日に公式サイトで発表しました。
所属事務所は「弊社所属の吉行和子が9月2日未明 肺炎のため 永眠いたしました 享年90」と報告。「故人の遺志により、葬儀は近親者のみで執り行いました。ここに謹んでお知らせ申し上げますとともに、吉行和子が生前受け賜りましたご厚誼に深く御礼申し上げます」としています。

吉行さんは1935年、詩人の吉行エイスケ、美容家の吉行あぐり夫妻の長女として東京に生まれました。兄は作家の吉行淳之介、妹は詩人の吉行理恵という文芸一家で育ちました。1957年、舞台「アンネの日記」の主役に抜擢され鮮烈なデビューを飾ると、その後も数多くの舞台、映画、テレビドラマに出演。1959年には映画「にあんちゃん」で毎日映画コンクール助演女優賞を受賞し、演技派女優としての地位を確立しました。

1978年には大島渚監督の映画「愛の亡霊」で主演を務め、その大胆な演技で国内外に衝撃を与え、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞しました。
テレビドラマでも、「3年B組金八先生」での思慮深い教員役や、「ふぞろいの林檎たち」シリーズでの母親役など、その温かくも芯の通った演技で、お茶の間からも広く親しまれました。
その後も精力的に活動を続け、2008年の映画「おくりびと」では主人公が勤める納棺会社の事務員役を好演し、作品のアカデミー賞外国語映画賞受賞に貢献しました。山田洋次監督の「東京家族」や「家族はつらいよ」シリーズでも重要な役どころを演じ、日本映画界に欠かせない存在であり続けました。