京都府立堂本印象美術館にて、堂本印象の没後50年を記念し、特別企画展「モダンなときめき―智積院襖絵の魅力―」が2026年1月20日より開催されます。本展では、通常非公開の智積院襖絵18面が特別公開され、現代女性の喫茶風景を描いた《婦女喫茶図》など、伝統的な寺院襖絵の常識を打ち破る印象の革新的な挑戦を紹介します。

智積院襖絵の全貌と革新性
京都府立堂本印象美術館で開催される本企画展では、堂本印象(どうもといんしょう、1891-1975)の芸術世界の中でも、特に智積院の襖絵に焦点を当てています。印象は生涯にわたり、全国13カ所の社寺の襖絵を手掛けたことで知られていますが、今回紹介される智積院の襖絵は、その中でも異彩を放つ存在です。
《婦女喫茶図》にみる現代性
昭和33年(1958年)、智積院に再建された宸殿を飾るべく、印象に襖絵の制作が依頼されました。智積院は、長谷川等伯父子による国宝《楓図》《桜図》が鎮座する日本美術の聖地です。そのような場所で、印象は野点(のだて)をする現代女性を題材に選びました。

▲《婦女喫茶図》昭和33年(1958) 智積院蔵
寺院の襖絵としては一般的な山水画や花鳥画、仏教画とは異なり、現代女性のティータイムを描くという発想は、当時の常識を打ち破るものでした。印象は「宗教活動は時勢と無縁であってはならない」という寺の要望に応えつつも、自らの芸術家としての信念を貫き、「百年ぐらいは悪口を言われるだろう」という覚悟で挑みました。この企画展では、この革新的な襖絵18面が通常非公開の状態で特別に鑑賞できます。
長谷川等伯への挑戦:《松桜柳図》
長谷川等伯父子の国宝《桜楓図》に対抗するかのように描かれた《松桜柳図》も展示されます。

▲《松桜柳図》昭和33年(1958) 智積院蔵
伝統を重んじる智積院という場で「対抗」という言葉を用いるほどの気概は、印象が伝統を模倣するのではなく、新たな時代に即した美を創造しようとした強い意志を示しています。
堂本印象が手がけた茶道具
堂本印象は絵画だけでなく、茶の湯にも親しんでいました。「数寄者(すきしゃ)」であった父の影響で自邸に茶室をしつらえ、茶会を催すなど、茶の湯を精神修養に資する芸術活動に不可欠なものと考えていました。
本企画展では、茶の湯を嗜むだけでなく、茶道具までも自ら制作していた印象の独創的なデザインの茶道具にも注目が集まります。新収蔵品の茶杓《アビニオン》をはじめ、茶碗や釜などが展示されます。

▲茶碗《雨もまたよし》昭和39年(1964)

▲茶入《豊穣》、茶杓《アビニオン》昭和38年(1963)
これらの茶道具は、現代アートのような色使いやフォルムで、伝統的な茶道具のイメージを刷新しています。
職員が選定した多様な作品
印象は、伝統的な日本画の枠にとらわれず、様々な「モダン」な作品を残しています。今回の企画展では、美術館の職員が選定した作品も多数展示されます。

▲《モンマルトルのバー》昭和27年(1952)

▲《聖歌》昭和44年(1969)
カラフルな抽象画や、パリの街角を描いた現代風俗画など、彼の表現の幅広さを紹介します。
展覧会開催概要
革新的な襖絵から茶道具、そして多彩な絵画まで、堂本印象の多角的な魅力を存分に味わえる特別企画展です。
開催情報
- 展覧会名:〈没後50年記念〉特別企画展 モダンなときめき―智積院襖絵の魅力―
- 会期:2026年1月20日(火)~3月22日(日)
- 開館時間:9:30~17:00 (入館は16:30まで)
- 休館日:月曜日 (月曜日が祝休日の場合は翌平日休館)
- 会場:京都府立堂本印象美術館
- 公式ウェブサイト:https://insho-domoto.com/
- 入場料金:
- 一般:800円 (団体640円)
- 高大生:500円 (団体400円)
- 65歳以上:400円 (団体320円、要公的証明書)
- 中学生以下および障害者手帳をご提示の方 (介護者1名を含む) は無料。
関連イベント
展覧会をさらに深く楽しむためのイベントが開催されます。
- ギャラリートーク:
- 日時:2026年2月7日(土)、3月7日(土) いずれも14:00より
- 会場:2階展示室
- 参加費・申込不要 (要観覧券)
- シンポジウム:
- 『いの字絵本 恋の都大阪の巻』復刊・復刻を記念し、シンポジウムが開催されます。
- 日時:2026年2月1日(日) 13:30~15:30 (開場 13:00~)
- 場所:住まい情報センタービル 3階ホール (大阪市北区天神橋6丁目4-20)
- 定員:150名 [無料/要申込]
- 申込受付:2025年12月12日(金)より開始予定。詳細は美術館ホームページをご確認ください。
本展は、堂本印象という芸術家が、いかにして時代と向き合い、伝統の中で新たな美を創造しようとしたかを体験できる機会です。
