トヨタとBMWは、未来のエネルギー「水素」の可能性を体感できる特別イベント『BMW×TOYOTA H2 DAYS』を2025年10月4日と5日の二日間にわたって開催しました。「水素社会」とは、水から作られるクリーンなエネルギー「水素」を日常生活の様々なシーンで活用する未来の社会を指します。両社はこのビジョン実現のため、イベントを通じてその重要性と可能性を広く伝える目的で連携しました。

BMWとTOYOTAのコラボレーションイベントで、2人の男性が壇上で立っている様子。

水素がもたらす新たなライフスタイル

今回のイベントのテーマは「Double the Excitement」でした。このテーマには、両社の協力による相乗効果や、水素が生活にもたらす可能性への期待が込められています。燃料電池自動車(FCEV)の試乗体験から、食の楽しみ方、未来を担う子どもたちへの教育プログラムまで、多様なコンテンツが展開されました。

FCEV特別試乗体験の実施

イベントの主要コンテンツの一つとして、FCEVの試乗体験が行われました。FCEVは水素と酸素の化学反応で電気を生成し、モーターを駆動する自動車であり、排出するのは水のみでCO2を一切排出しないエコカーです。

参加者はトヨタとBMW、両ブランドのFCEVに試乗し、異なるブランドのFCEVを比較体験する機会が提供されました。また、「TOKYO H2 HUB」での水素充填の説明や、水素焙煎コーヒーの試飲も行われました。これにより、水素がエネルギーとして機能し、日常に溶け込む現在と未来を五感で体験できる機会となりました。

BMWのショールーム前に、ラッピングされたBMW iX5 HYDROGENと白いCROWNが並んでいる様子。
BMWのショールームの前に、水素燃料電池車とグレーの車が駐車されている様子。

水素グリラーによる食体験の提供

水素エネルギーの活用は自動車に留まらず、食の分野でも紹介されました。イベントでは、水素を燃焼させて熱源とする調理器具である水素グリラーを使った特別メニューが提供されました。水素グリラーは、食材の旨みを引き出し、みずみずしさを保ちながら、余分な脂をカットし、煙の発生を抑えることが特徴です。

水素グリルに関する展示会で、人々が製品を試している様子が写っています。展示会には、水素グリルに関するポスターがあり、製品の利点や水素が未来を変えるというメッセージが書かれています。

開発責任者によるトークショー

イベント初日には、トヨタとBMWそれぞれの開発責任者によるスペシャルトークショーが開催されました。これは、両社がFCEV開発に取り組む意義や、連携によって実現可能と考える水素エネルギー社会について、開発者たちの見解を聞く機会となりました。

プレゼンテーション中の2人の男性の画像。背景には、電気自動車の種類を示す図があります。

トヨタの燃料電池開発への取り組み

トヨタ自動車のクラウン・MIRAIチーフエンジニアである清水龍太郎氏は、30年にもわたり燃料電池の開発に取り組んできたトヨタの歴史と、カーボンニュートラル実現に向けた水素エネルギーの重要性を強調しました。FCEVが乗用車だけでなく、救急車やごみ収集車、トラック、タクシーといった商用モビリティにも導入され、社会インフラとしての活用が進められていることが示されました。

BMWの水素モビリティ戦略

BMWのペーター・レナート氏は、実証実験車両「BMW iX5 Hydrogen」が世界各国でテスト走行を重ねている現状を説明し、2028年にはBMWグループ初のFCEV量産モデルとして発売される具体的な計画を述べました。同氏は、カーボンニュートラル実現には電気自動車のみでは不十分であり、未来のモビリティにおいて水素が「より豊かな選択肢」を提供することの重要性を強調しました。

BMWの水素自動車の発表会。プレゼンテーションが行われ、観客が集まっている。
2人の男性が笑顔で話している様子が写っています。背景には車の画像が映し出されており、プレゼンテーションかイベントのようです。

企業連携による開発の加速

両氏の対談からは、トヨタとBMWが技術を共有しつつも、それぞれのブランドの個性を活かしたFCEVを開発していることが示されました。この連携は開発の効率化とFCEV技術開発の加速に繋がり、より魅力的な商品の創出に寄与すると期待されています。

燃料電池ミニカー教室の開催

イベント二日目には、子どもたち向けの「燃料電池ミニカー教室」が開催されました。トヨタ自動車の技術者が水素と燃料電池の仕組みを分かりやすく説明し、子どもたちが実際に「水素で走るミニカー」を組み立てて走行させる体験型のワークショップです。

プレゼンテーションをしている男性と、それを見ている子供たちや大人たちの写真。画面には車の絵と"燃料電池 組み立て スタート"の文字。

本教室は、カーボンニュートラルの考え方やFCEVの仕組みを実践的な体験を通じて学ぶ機会を提供しました。これにより、次世代のクリーンエネルギー技術への興味と理解を深めることが期待されます。

子供たちが科学実験に取り組んでいる様子
子供がミニカーのレースを見ている様子

トヨタとBMWが水素に注力する背景

今回のイベントは、トヨタとBMWが水素エネルギーに注力する理由を示しました。両社は2011年以来、10年以上にわたり環境技術で協力関係を構築しています。

カーボンニュートラル実現への多様な選択肢

トヨタは、再生可能エネルギーの不安定さを補完する「貯蔵・運搬可能なエネルギー」として水素に大きな可能性を見出しています。余剰電力を水素に変換し、必要な時に発電する仕組みは、持続可能な社会の実現に不可欠であるとされています。

BMWもまた、カーボンニュートラル実現には電気自動車だけでなく、水素を重要な選択肢と位置づけています。電気自動車が抱える充電インフラ、航続距離、充電時間などの課題に対し、水素燃料電池車は短時間での燃料補給と長距離走行に適しているため、多様なニーズに応えるモビリティとして期待されています。

BMWとTOYOTAが水素に関する取り組みを紹介する展示。水素エネルギーの可能性や、燃料電池自動車(FCEV)の試乗体験、水素のある暮らしを体感できるコンテンツなどが紹介されている。

業界連携による技術革新の促進

両社の提携は、開発の効率化と技術革新のスピードアップに貢献すると期待されます。それぞれの強みと知見を共有することで、より高性能で魅力的なFCEVが早期に市場に投入される可能性が高まります。これは消費者にとって、未来の選択肢が広がるというメリットをもたらします。

水素社会の展望と公式情報

『BMW×TOYOTA H2 DAYS』は、水素エネルギーがライフスタイルに豊かさをもたらす可能性を示すイベントでした。自動車、食、教育といった多様な側面から水素の魅力が発信され、多くの人々が水素社会の実現に期待を抱いたと考えられます。2028年にはBMW初の量産型FCEVが発表される計画もあり、水素社会は現実的な未来として認識されています。

イベントの詳細は、以下の公式サイトで確認できます。