先日、奈良の地で未来の映画人たちが躍動する特別な祭典、「なら国際映画祭 for YOUTH 2025」が閉幕しました。単なる映画の上映会とは一線を画し、10代のユース世代が「創る・観る・運営する」という3つのプロジェクトを主体的に手掛けるこのイベントは、彼らの人生を豊かにする感動体験の連続であったと報告されています。

参加ユースからは、「映画で救われた」「自分に自信がついた」「今までの人生で感じたことのない達成感を感じた」「映画祭は第二の家族」といった声が聞かれました。彼らが経験した「ゼロからイチを生み出す」大変さと尊さが、彼らにとって大きな財産となったものと見られます。

ユース世代が主役の映画祭の概要

「なら国際映画祭 for YOUTH」は、未来の映画人や表現者を育てることを目指し、2018年のユース審査員プロジェクトを皮切りに、2021年から本格的にスタートしました。この映画祭の根底には、「子どもを子ども扱いしない」という理念があります。

この活動は、単に才能を発掘するだけでなく、若者たちが当事者意識を持って主体的に関わる場を提供している点が特徴です。映画という芸術を通して、彼らは創造性だけでなく、コミュニケーション能力、課題解決能力、そして「自分にはできる」という自信を育んでいます。これは学校教育だけでは得難い、生きた学びの場であると言えます。

具体的には、以下の3つの柱で展開されています。

  • ユース映画制作ワークショップ:自ら脚本を書き、撮影し、演出、編集までを行う。
  • ユース映画審査員:世界の秀作を鑑賞し、議論を重ねて賞を選出する。
  • ユースシネマインターン:映画祭の運営に携わり、裏側を支える。

これら全てを10代が中心となって手掛けています。

なら国際映画祭 for YOUTH 2025の様子

「なら国際映画祭」の歴史と哲学

「なら国際映画祭」全体の背景について説明します。奈良の平城遷都1300年目にあたる2010年、世界的に著名な映画作家である河瀨直美氏をエグゼクティブディレクターに迎え、2年に1回の本祭が始まりました。

この映画祭は、奈良という歴史ある土地を舞台に、映画の魅力を伝え、未来の才能を育むという明確なビジョンを掲げています。本祭の企画運営のほか、ユース世代を育む「for YOUTH」や、国内外の若手監督が奈良を舞台に映画を製作する「NARAtive(ナラティブ)」といったユニークなプロジェクトを展開し、単なる上映イベントの枠を超えた、文化創造のハブとしての役割を担っています。

公式HPはこちらからどうぞ!
https://nara-iff.jp

10代が制作した2つの注目作品

今年の「なら国際映画祭 for YOUTH」で特に注目を集めたのは、ユース世代が自らの手で作り上げた2つの短編映画です。

短編映画『縁 en』

ユース映画制作プロジェクトの核となるのが、このワークショップです。このプログラムは、「子どもを子ども扱いしない」という理念を体現し、脚本・撮影・演出・編集までをすべてユースのみで行うものです。

今年の夏、13歳から17歳の4人の若者が手掛けた短編映画『縁 en』は、その努力と情熱の結晶です。この作品は、大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「Dialogue Theater いのちのあかし」にて特別上映されました。

大阪・関西万博での上映

  • 作品名: 『縁 en』
  • 監督・脚本:井上楽斎・前尾奈佑・山田梨乃・中越菊央
  • 上映時間:13分
  • 制作年:2025年
  • 国:日本

万博という大舞台での上映は、彼らにとって忘れられない経験となったことでしょう。

短編映画『やまのべradio』

もう一つ、映画祭の初日にワールドプレミア上映されたのが、18歳から24歳までの若者を対象としたプロジェクト「NARAtive Jr.(ナラティブジュニア)」の第3作目となる短編映画『やまのべradio』です。

この作品は、ベテラン俳優から個性豊かなキャストまで、本格的な出演陣を迎えて制作されており、若手監督の登竜門としての役割も果たしています。新聞配達という日常的なテーマを通して描かれるヒューマンドラマは、多くの来場者の心に響いたと見られます。

オープニングセレモニーの様子

オープニングセレモニーには、新アンバサダーのハイヒール・リンゴ氏、SSFF & ASIA代表の別所哲也氏、SSFF & ASIAフェスティバル・ディレクターの武笠祥子氏も駆けつけ、この作品への期待の高さが伺えました。

  • 作品名: 『やまのべradio』
  • 監督:小松頼礼
  • 上映時間:27分
  • 制作年:2025年
  • 国:日本
  • 出演:山村憲之介、川代健次郎、中村旺土郎、DOZAN11、島田角栄、橋本佳奈

こちらも『縁 en』と同様、大阪・関西万博で特別上映され、多くの関心を集めました。

10代が世界を「観る」喜び:クリスタルSHIKA賞の発表

映画を「創る」だけでなく、「観る」ことにもユース世代が主体的に関わるのが、この映画祭の大きな魅力です。ベルリン国際映画祭の推薦作や、ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)の受賞作など、世界中から集まった作品群を、彼らは真剣な眼差しで鑑賞しました。

そして映画祭最終日には、ユース映画審査員による審査のもと、「クリスタルSHIKA賞」が発表されました。受賞したのは、ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門推薦作『海辺へ行く道』と、SSFF & ASIA受賞作『破れたパンティーストッキング』です。

クリスタルSHIKA賞発表の瞬間

審査に参加したユースたちは「自分たちの言葉で映画の魅力を語り合い、互いの意見をぶつけあい、尊重する経験ができた」と振り返っています。これは、映画を単なるエンターテイメントとして消費するのではなく、深い思考と対話のツールとして活用している証拠です。彼らの感性が磨かれ、多様な価値観に触れることで、将来の選択肢が広がるものと考えられます。

10代が「運営する」映画祭の舞台裏

さらに、ユース世代は映画祭を「魅せる」側、つまり運営にも深く関わっています。ユースシネマインターンとして、イベントの企画から広報、当日運営まで、映画祭の舞台裏を支える貴重な経験を積んでいます。

「映画祭は第二の家族」という言葉が示すように、共に汗を流し、困難を乗り越える中で、彼らの間に強い絆が生まれたものと見られます。表舞台に立つクリエイターだけでなく、それを支えるプロデューサーやイベントプランナーといった、多様な「映画に携わる」可能性をこの場で発見できる機会が提供されています。

奈良から生まれる「映画の未来」

なら国際映画祭 理事長であり、エグゼクティブ・ディレクターを務める河瀨直美氏のメッセージは、この映画祭が若者たちにもたらす影響の深さを物語っています。

「てさぐりでもあらけずりでも、ゼロからイチを生み出すこと。それは本当に大変で、同時にとても尊いもの。そのエネルギーを仲間と一緒にともにする場、それがなら国際映画祭です。10代でその大変さと尊さを体験することは、人生の宝であり、これから先の彼らの道しるべとなるでしょう。」

まさに、この映画祭は単なるイベントではなく、若者たちの人生に深く刻まれる「成長の物語」を生み出す場所です。奈良の豊かな歴史と文化の中で、未来の映画人たちが育っていく姿は、大人にとっても大きな希望となるでしょう。

なら国際映画祭 理事長/エグゼクティブ・ディレクター 河瀨直美氏

2026年開催情報と支援方法

「なら国際映画祭 for YOUTH 2025」は閉幕しましたが、この活動は2026年へとつながります。

2026年の開催日程

2年に一度開催される「なら国際映画祭」本祭が、2026年度に第9回を迎えます。

  • 会期: 2026年9月19日(土)から23日(水・祝)
  • 会場: 奈良市内

詳細は2026年春に発表される予定で、ユースの各プロジェクトの募集も同時期を予定しています。10代で映画の世界に興味がある方は、この機会に注目されることを推奨します。

ふるさと納税でのご支援のお願い

なら国際映画祭は、多くの方の支援によって成り立っています。未来の映画人たちを育むこの取り組みを応援したい方は、ふるさと納税を通じて支援することができます。

  • ふるさと納税でのご支援はこちらから
    https://nara-iff.jp/join/join-05/
    奈良市を通じて、映画文化の発展と若者たちの成長を応援できます。

運営団体とSNS情報

「なら国際映画祭」を運営するのは、特定非営利活動法人なら国際映画祭です。

  • 所在地: 〒630-8241 奈良市高天町45番地 アート福住ビル2階 組画内
  • 設立: 2010年

最新情報やユースたちの活動の様子は、以下のSNSで確認できます。

映画という表現方法に魅せられている方は、ぜひ「なら国際映画祭」の活動に注目してください。