現代美術家である篠原有司男氏、篠原乃り子氏、そして息子の篠原アレックス空海氏の三世代によるグループ展「Generations」が、ニューヨークのGOCA by Gardeにて2026年1月8日より開催されます。この展覧会は、世代を超えて継承される創作の衝動と、彼らが共有する家族の物語をテーマとしています。

「Generations」展の概要

ニューヨークのギャラリー「GOCA by Garde」では、2026年1月8日(木)から2月19日(木)の期間、「Generations」と題した展覧会が開催されます。本展は、現代美術界で活躍する篠原有司男氏、篠原乃り子氏、篠原アレックス空海氏という三世代のアーティストが参加するグループ展です。

この展覧会は、彼らが共有してきた制作環境、身体性、そして物語性が、それぞれのアート作品にどのように表現されているのかを探求するものです。戦後日本美術の最前線を駆け抜けた父、個人史から普遍的なテーマを紡ぐ母、そして都市文化と同時代性を自身の表現に取り込む息子。三者三様の視点と表現が、一つの空間で交錯することで、鑑賞者は時間を超えた層を感じ取ることができます。

黒いインクの飛沫が描かれた抽象的な絵画。白い背景に、黒いインクが様々な形で飛び散り、滴り落ちる様子が表現されている。
《Autumn Sunshine》(2025年)

三世代のアーティストと作品

篠原有司男

戦後日本美術史に名を刻む前衛芸術家、篠原有司男氏は、1960年代には「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」の創設メンバーとして活動し、その後ニューヨークへと活動拠点を移しました。彼の代名詞である「ボクシング・ペインティング」は、ボクシンググローブに絵の具を染み込ませ、キャンバスを打ちつけるダイナミックな手法で、世界中の美術館で高く評価されています。会期中に94歳を迎える篠原氏が、GOCA開館1周年を記念して制作した新作《Black on White》(2025)は、今なお衰えぬ創作意欲の証です。その迫力ある作品を間近で鑑賞できます。

画家が大きなキャンバスに黒い絵の具で抽象的な絵を描いている様子。
90歳を超えてなお創作に打ち込む篠原有司男氏の姿です。

2人の男性が、絵画の前で立っている写真。一人は若い男性で、黒いジャケットを着ています。もう一人は年配の男性で、オレンジ色のセーターを着ています。背景には抽象的な絵画があります。
作品の前で佇む篠原有司男氏(右)と、アレックス空海氏(左)と見られます。

篠原乃り子

篠原有司男氏の妻であり、自身の半生を投影した「キューティー&ブリー」シリーズで国際的に知られる画家・版画家の篠原乃り子氏。彼女の作品は、コミック的な表現を用いながらも、アーティストとしての自立、夫との関係、創作を巡る葛藤、そして日常のささやかな出来事を、時にユーモラスに、時に切なく描き出します。個人的な物語を普遍的なテーマへと昇華させる彼女の表現は、多くの人々の共感を呼んできました。今回は近年の新作・近作を通じて、彼女の幻想的で詩的な世界観に触れることができます。

2人の人物が、パイナップル、魚、天使、渦巻きのあるカラフルな絵画。2人の人物は、それぞれ魚と渦巻きの中心にいるように見える。背景には建物とレンガの壁がある。
篠原乃り子氏の作品に見られる、物語性と個性豊かなキャラクターです。

アトリエで作業をする老夫婦の様子。
長年、生活と創作を共にしてきた篠原有司男氏と乃り子氏です。

篠原アレックス空海

両親からアートの遺伝子を受け継ぎながらも、彼自身の独自の表現世界を築き上げているのが、息子の篠原アレックス空海氏です。ブルックリンを拠点に、都市の廃材やストリートカルチャーの感覚を取り入れた絵画や彫刻を制作しています。使用済みの段ボール、電線、工業用プラスチックといった「都市の痕跡」を素材として活用し、ネオンカラーやジェスチャー性の強い筆致で、スケートボードやバイクなどのモチーフを描き出します。彼の作品からは、現代的なスピード感や消費社会、そして都市に生きる人々の記憶が、個人的な物語として昇華されているように感じられます。

抽象的な絵画で、さまざまな形や顔が描かれています。パステルカラーが使用され、全体的に柔らかい印象を与えています。
篠原アレックス空海氏の作品です。

GOCA by Gardeについて

今回の展覧会の舞台となる「GOCA by Garde」は、ニューヨークのチェルシー地区に位置するギャラリーです。インテリアデザインをグローバルに展開する株式会社GARDEが手掛けており、日本およびアジアのアーティストを世界に紹介する拠点として、絵画、彫刻、陶芸など多彩な作品を展示しています。GOCA by GardeはGARDE初の海外アートギャラリーであり、今回の「Generations」展は開館1周年を記念する特別な企画です。世界有数のアートとカルチャーの中心地であるチェルシーで、日本の現代アートが発信される場として注目されています。

絵画が展示されたアトリエの風景。様々な色と形の抽象的な絵画が壁に立てかけられ、画材や小物が置かれたテーブルが手前に見える。
アトリエの様子です。

展覧会詳細・アクセス

ニューヨークに滞在する機会がある方にとって、本展は無料で鑑賞できる貴重な機会です。

株式会社GARDEについて

今回の展覧会を主催する「株式会社GARDE」は、ブランディング・デザイン会社として、ラグジュアリーを中心としたリテール、オフィス、レジデンス、ホテル、飲食店など、幅広い分野の空間デザインを手掛けています。東京本社を拠点に、ミラノ、パリ、ニューヨークなど世界各地に拠点を持ち、グローバルに活躍する企業です。長年培ってきた空間デザインのノウハウとアーティストとのネットワークを活かして設立されたGOCA by Gardeは、GARDEが目指す「アートを通じた社会へのポジティブな影響」を具現化する場として活動しています。

3人の人物が、絵の具が飛び散った壁を背景に立っている写真。左の男性は、赤いインナーと、絵の具で汚れたジャケットとズボンを着用している。中央の女性は、灰色のセーターと茶色のズボンを着用している。右の男性は、黒いセーターとジーンズを着用している。
GARDEのオフィスかギャラリーと思われる空間で談笑する人々です。

アートとは、個人の内面や社会全体を映し出す存在です。そして、その創作の衝動が「家族」という普遍的な単位の中でどのように紡がれていくのか――篠原一家による「Generations」展は、私たちに新たな問いを投げかけます。この展覧会が、日米のアートシーン、ひいては世界のアート愛好家たちに、新たなインスピレーションと対話の機会をもたらすと期待されます。