ベイン・アンド・カンパニーからの提言「変革期のM&A:AI・地政学時代に日本企業はどう競争力を高めるのか」

戦略コンサルティングファームであるベイン・アンド・カンパニー(以下ベイン、所在地:東京都港区赤坂)は、「ベイン・アンド・カンパニーからの提言 変革期のM&A:AI・地政学時代に日本企業はどう競争力を高めるのか」と題したプレスセミナーを2026年8月18日(火)に実施いたしました。

2025年の世界M&A市場は前年比40%増(金額ベース)と幅広い回復を遂げ、2026年もその高水準を維持しています。牽引役は、自社のケイパビリティ等の変革を目的とした「スコープディール(変革型ディール)」の増加と、AI活用や地政学リスクに伴うサプライチェーン再構築への対応です。
一方、日本のM&A市場も高水準を維持しており、2025年の取引総額は2,300億ドルに達しました。東証によるPBR1倍超えへの改善要請や同意なき買収指針の明確化などを背景に、M&Aは日本企業の価値創造の中核ツールとして定着しつつあります。さらに、地政学リスクを受けたアウトバウンドM&Aの急増により、日本企業の「自己変革」に向けた投資姿勢はかつてない高まりを見せています。

本セミナーでは、大原崇および呉文翔の両パートナーが、不確実性の高まる環境下で日本企業がM&Aを自己変革の手段としてどう活用すべきかを解説し、具体的なアプローチを提言しました。

■スピーカー
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大原 崇

大原 崇/Takashi Ohara ベイン・アンド・カンパニー パートナー
20年以上にわたり、電機・電子機器メーカー、半導体、自動車、運輸等の幅広い業界の国内外のクライアントに対するコンサルティングに従事。全社ポートフォリオ戦略、成長戦略、コスト構造改革、戦略立案から買収後の統合支援までの国内外のM&A支援等、多岐にわたるテーマのプロジェクトを手がけています。
ベイン東京オフィスにおけるM&Aプラクティスリーダー。

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呉 文翔

呉 文翔/Bunsho Kure ベイン・アンド・カンパニー パートナー
ベイン東京オフィスのプライベート・エクイティプラクティスのリーダーの1人であり、主にPEファンドを中心とした投資家のクライアントとの投資・ポートフォリオ戦略、ビジネス・デューデリジェンス、買収後のバリューアップ、売却戦略のプロジェクトを中心にリードしています。M&Aプラクティスでもリーダーとして投資家以外の事業会社などのクライアントにもM&Aに関わる事業領域での支援を提供しています。

■ 世界・日本のM&A市場の現状と展望:高まる「自己変革」としてのM&Aの有効性
セミナーの冒頭、大原は2025年の世界M&A市場について、買い手の業種や地域を問わず回復の裾野が広がっていると解説しました。

その特徴として、企業が既存の強みを単純に拡大する「スケールディール(規模拡大)」ではなく、新たな事業領域、地域、技術を獲得して事業ポートフォリオをシフトさせる「スコープディール(変革型)」の比率が過去最高の60%に達した点、および50億ドルを超えるメガディールが相次いだ点を挙げました。

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一方で大原は、企業のキャッシュ支出において、株主還元(自社株買い・配当)への圧力の高まりや、技術進化、自動化、サプライチェーン強靭化のための設備投資・研究開発といった「M&A以外の資金使途」との競合が激化しており、キャッシュ支出に占めるM&Aの割合は30年来の低水準にあるという見過ごされがちな現状を指摘しました。

日本のM&A市場においては、高水準が維持されており、特に日本企業による海外企業の買収(アウトバウンドM&A)が拡大し、2026年年初来でアジア太平洋(APAC)地域最大となりました。地政学リスクの裏返しとして、安定した成長が期待できる北米市場への展開が目立っています。大原は、「AIや技術進化、グローバル化の後退など急激な環境変化に対応するため、企業の自己変革の手段としてM&Aの有効性はさらに高まっていく」と結論づけました。

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■ AIがM&Aにもたらす変革:投資判断の二極化と、DD実務の急速な効率化
続いて呉が、AIがM&Aにもたらす影響について、「AI関連案件の増加」「投資テーマへのAI影響」「DD実務でのAI活用」の3点から詳細を説明しました。

まず「AI関連案件の増加」については、2025年、5億ドルを超える大型テクノロジーM&Aの45%がAIに関連する案件でした。AIのモデルそのものだけでなく、AIネイティブのハードウェア、データプラットフォーム、クラウドセキュリティ、データセンターといったAIを支える周辺領域も対象となった点が特徴です。日本企業においても、半導体、AIアクセラレーター、データセンター、OTセキュリティ、AI人材など、自社がAI時代に競争力を持つための投資が急増しています。

次に「投資テーマへのAI影響の加味」として、AIはすでに投資判断そのものを左右する重要論点になっています。呉は、75%超の企業がDDにおいて対象企業の事業に対するAIの影響(リスクと機会)を評価しており、その結果、27%が案件から撤退、19%がバリュエーション(投資評価額)を引き上げているというデータを紹介しました。これは、既存製品が汎用AIに代替される差別化リスク(撤退要因)がある一方、独自の顧客データを持ち、AIを実装して生産性向上や新規有料サービス創出ができる可能性(バリュエーション向上要因)を見極めるDDが高度化していることを示しています。

最後に「DD実務でのAI活用」について、M&AプロセスにおいてAIを活用する割合は2023年の16%から2025年には45%に急増し、手作業の削減、ディール期間の短縮、コスト削減などの効果がすでに実感されています。「今までトライアルとしてのツールだったAIが、実際にM&Aのプロセスに組み込まれる段階へ移っている」と呉は言及しました。具体的には、過去の専門家インタビュー記録の一元管理やAI検索、回答の信頼性(なりすましや論理矛盾等)の自動検知、さらにはAIによるインタビューなどの高度なユースケースが実用化されています。

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呉は、「AIによって初期のデータ収集やパターン抽出といった調査時間が削減される結果、人間は『調べる仕事』から解放され、より高度な『考える仕事(投資判断、仮説検証、コミュニケーション)』へリソースを集中させることが求められる。その結果、意思決定や価値創造プラン(VCP)の構築といった人間主導のプロセスが高度化し、『投資判断の質』が高まる」と強調しました。

■ 地政学リスクの常態化と、不確実な環境下で勝者が実践するM&Aの「基本動作」
最後に大原は、中東情勢緊迫化によるコモディティ(原油、LNG等)の供給リスクなど、地政学的・マクロ環境の衝撃がM&A市場に与える影響について解説しました。

大原は、ホルムズ海峡封鎖のような地政学的リスクは、すでにM&A市場を形作っている3つの潮流「テクノロジーによる変革」「脱グローバル化によるサプライチェーンの戦略資産化・現地化」「プロフィットプールのシフト」をさらに加速させていると指摘しました。このような動きについて大原は、「グローバルのマクロ経済への向かい風はあるものの、企業はこの3つのトレンドに正面から向き合い、機会として捉えることが重要だ」と指摘しました。国内の主要な総合電機・IT企業が戦略の中核にAIを据え、IT・通信大手企業がAIインフラ投資を推進し、大手重工業企業が防衛システム関連の投資を強化しているように、不確実な局面を好機と捉えて投資を積極化する動きが目立っています。

ベインの過去のデータ(リーマンショック期を含む2007年~2017年の調査)によると、不確実な環境下でもM&Aを継続・蓄積した企業(大中規模案件を多数行う『マウンテンクライマー』や、比較的小規模な買収を繰り返す『シリアル・ボルトオン』)は、M&Aを行わなかった企業や少数の大規模買収に賭ける企業(ラージベット)に比べて、中長期的に3割(27%)程度高い投資リターンをあげています。

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大原は、不確実な局面で日本企業がとるべき実践アプローチとして、以下のM&Aの「基本動作」の重要性を説きました:
1. ポートフォリオの精査:資本市場からの厳しい目線を踏まえ、持ち続ける資産と売却・スピンオフすべき資産を現在・将来の両面から見極めて不断の入れ替えを行うこと。
2. スクリーニングとDDの強化:特に業績の芳しくない企業を買いに行く場合、短期のターンアラウンド力や中長期の回復力を確実に見極める目利き力を備えること。
3. 売却・スピンオフの視野化:買収のみならず売却まで視野に入れ、財務余力の確保や価値の顕在化につなげることでポートフォリオの不断の代謝を進めることこそが、不確実な環境下で中長期的な投資リターンを高める鍵になる」と提言し、セミナーを締めくくりました。

■ベイン・アンド・カンパニーについて
ベイン・アンド・カンパニーは、世界中の経営リーダーと協働し、最も困難な課題の解決と持続的な成果の創出を支援しています。1973年の創業以来、プライベート・エクイティ・ファームやその投資先企業を含む幅広いクライアントとパートナーシップを築き、変化を先取りするために必要な能力の構築と、業界変革の実現を支援してきました。
私たちはクライアントの成功を自らの成功指標と位置付けており、クライアント推奨度において業界最高水準の評価を獲得しています。

また、ベインは世界で最も働きがいのある企業の一つとして継続的に高い評価を受けています。戦略コンサルタント、業界・機能領域の専門家、テクノロジスト、アドバイザー、そして幅広いテクノロジーパートナー・エコシステムを結集し、「One Bain」としてグローバルに活動しています。

商号 : ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド
所在地: 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー37階
URL : https://www.bain.co.jp

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プレスリリース提供元:@Press