『日中経営者』が「ラムリサーチ社がNIMSの研究プロジェクトを支援 主任の中国人研究者に注目」の記事を公開

提供:@Press

『日中経営者』は、「ラムリサーチ社がNIMSの研究プロジェクトを支援 主任の中国人研究者に注目」の記事を公開しました。

画像1
中国人研究者達博(Da Bo)博士

半導体は、現代社会を支える基盤技術である。電子機器の中核であり、産業発展の原動力ともいえる存在だ。「半導体を制する者は世界を制す」とも言われ、近年の半導体不足は、その戦略物資としての重要性をあらためて浮き彫りにしている。

2026年4月8日、世界有数の半導体装置メーカーであるラムリサーチ(Lam Research)は、日本および北米において、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)への特別寄付を相次いで発表した。これにより、達博(Da Bo)博士を中心に、最先端半導体の製造に用いられるエッチング装置に関する、プラズマにさらされる重要材料やコア部品の研究開発と実用化が進められる。成果は、TSMC(台湾積体電路製造)をはじめとする最先端半導体の量産ラインでの活用が見込まれている。

現在の世界の半導体産業において、寄付という形で研究が公開され、かつ中国籍の研究者が主導して重要技術の研究を担う事例は極めてまれである。今回の動きは、ラムリサーチが当該分野および達博博士のチームの実力を高く評価していることを示すものといえる。

今回の提携を主導する達博氏は、かつて中国科学技術大学で学び、理学博士号を取得した後、NIMSに入所し、現在は主任研究員を務めている。これまで長年にわたり、ラムリサーチとNIMSの共同研究プロジェクトの責任者を務め、主に半導体の電子ビームおよびエッチング装置に関する重要材料やコア部品の研究開発と実用化に携わっている。

エンジニアリング分野は産業の中核技術に関わるため、研究内容の詳細が外部に公開されることは限られている。これに対し、達博氏のチームは基礎科学分野で継続的な研究を重ね、公開可能な形で一連の独創的な成果を生み出してきた。こうした成果は、個別の技術課題の解決にとどまらず、独自の研究アプローチや問題意識をも示している。こうした点こそが、同チームが国際的な大手装置メーカーから継続的に注目され、支援を受けている理由である。

■材料で、世界を変える
50ナノメートル、5ナノメートル、1ナノメートル――。ナノの先には何があるのか。実験チームが技術的なブレークスルーを重ねる一方で、いかに量産へとつなげるかが当面の大きな課題となっている。10分の1ナノメートルという極微小の領域に挑むなか、先進的な装置メーカーはすでに、材料研究を装置設計と並ぶ重要な要素として位置づけている。

「材料で、世界を変える」。これはNIMSの公式サイトのトップページに掲げられている、広く知られたキャッチコピーである。実は、このスローガンを提唱したのは、中国出身の研究者である達博氏だ。この言葉は、同氏の長年にわたる研究の歩みを象徴するものでもある。そのため、多くの研究者の共感を呼びやすいのだろう。

NIMS在籍中、達博氏のチームは、世界で初めて円柱対称回転結晶の開発に成功した。これは、従来の結晶学の枠組みを打ち破る、まったく新しい結晶構造である。この構造を基盤として、チームは「電子ビーム光学」という新たな研究分野を切り拓いた。材料による電子の回折を利用して運動軌道を制御することで、従来の電磁レンズとは異なる電子制御の手法を提案している。これにより、次世代の並列電子ビーム挿画装置の実現に向けた重要な技術的道筋が示された。

肉眼では捉えられないこの領域で起こりうる変革は、たとえ話で理解することができる。従来は電磁場を用いて電子を「引っ張って動かす」方法であり、わずかな電子を制御するにも大がかりな装置が必要だった。これに対し、材料そのもので電子を「誘導」する手法に切り替えれば、爪先ほどの小さな構造の中で、従来を大きく上回る数の電子を同時に処理できる可能性がある。装置は巨大なものから極小へと変わり、理論上は全体の効率も桁違いに向上する。数百倍、あるいはそれ以上に達することも見込まれている。

画像2
達博氏

■天才の構想で人々の生活に恩恵を
歴史を振り返ると、鉄鋼から単結晶シリコンに至るまで、材料分野における新たな発見は、そのたびに科学技術の質的飛躍をもたらし、人類文明に大きな変革を与えてきた。博士課程在学中、達博氏は実験を重ねると同時に大胆な問いを投げかけ、単結晶でも準結晶でもない「第3の結晶構造」の探求に取り組んだ。約20年にわたる研究の積み重ねを経て、NIMS在籍中にはチームを率いて円柱対称回転結晶の実現に成功した。この成果は、材料分野における先見的な構想を実証するとともに、半導体装置の性能向上に向けた重要な基盤となっている。

この新しい結晶構造から生まれた技術的アプローチは、半導体製造分野への応用が期待されるだけでなく、材料分析や量子計算といった分野への展開も見込まれている。

これを踏まえ、達博氏のチームは「材料から出発する」という研究開発の枠組みを提示した。すなわち、原子レベルの製造技術を用いて半導体装置における重要材料を精密に制御し、コア部品として製造・実装する。さらに、それらを既存の装置システムに組み込み、実際の稼働環境で検証を行うことで、材料から部品、装置に至るまでの一体的な性能向上を実現しようとするものである。

さらに重要なのは、このアプローチが半導体量産ラインのスケールメリットを活用し、原子レベルの製造が持つ微細な優位性を、チップ製造工程へ段階的に反映できる点にある。これにより、材料レベルでの最適化が、最終的には歩留まりの向上や製造コストの低減として具体化される。

材料から出発し、部品を経て装置へと広がる――基礎研究から工学的実装へ、ミクロなスケールから量産ラインでの検証へと展開していく。こうした段階的な積み重ねを通じて、技術は徐々に現実のものとなっていくのである。

研究開発の傍ら、達博氏は『かながわ経済新聞』の依頼を受け、「半導体設備材料の最前線」と題するコラムを執筆している。自身の研究成果を交えながら体系的に紹介するとともに、半導体設備材料の視点から産業の発展をわかりやすく解説している。最先端の技術研究に取り組む一方で、科学の普及にも力を注ぎ、その発信は静かに人々の理解を広げている。

画像3
上段は原子構造の模式図、下段は対応する対称性の模式図(積み木によるイメージ)である。

■数々の「初」が歴史を切り拓く
今回、ラムリサーチが達博氏のチームへの戦略的寄付を公表したことは、いくつもの象徴的な「初」を示す動きと受け止められている。世界展開する業界大手であるラムリサーチは、これまで多くの国や地域の研究機関と連携してきた。しかし、中国籍の研究者が主導する共同プロジェクトを公に支援する事例は、現在の産業環境においても極めて珍しい。

達博氏の学術的な歩みもまた、数々の実績を積み重ねてきた。中国出身の研究者が、世界トップクラスの材料研究機関であるNIMSにおいて半導体装置の研究を継続し、重要分野で確かな存在感を示していることは、極めて稀な例といえる。同氏は2016年にNIMSの終身職を獲得し、当時、最年少クラスの外国人研究者となった。さらに、同研究所の最高栄誉である「理事長賞」においても最年少での受賞を果たしている。その後も、花王や日立、住友といった有力企業・研究機関から、研究支援や表彰を受けてきた。

国際舞台でも数々の栄誉を重ねており、その研究の水準と影響力の高さはすでに広く認められている。今回の寄付の公表は、達博氏の研究分野が国際的な技術体系の中で重要な位置を占めていることを、あらためて示すものとなった。同時に、基礎研究と産業ニーズを結びつける点において、NIMSの総合的な研究力と競争優位性を浮き彫りにしている。

2011年、イスラエルの科学者ダニエル・シェヒトマンは、準結晶の発見によりノーベル化学賞を受賞した。この約30年越しの受賞は、既存の知識体系に挑み続けた姿勢が評価されたものであり、同時に、真理の探究と未知への挑戦を志す後進への励ましともなっている。

現在、単結晶や準結晶に続く新たな構造として、円柱対称回転結晶の発見という成果は、日本科学技術振興機構(JST)の橋本和仁理事長から「準結晶の発見に匹敵する独創的な意義を持つ」と評価されている。

画像4
達博氏

詳細はこちら

プレスリリース提供元:@Press

※この記事は、プレスリリース配信サービス「@Press」より提供を受けて掲載しています。 記事の内容や関連画像、および発表されたサービス・商品に関するお問い合わせは、発表元である企業・団体様へ直接ご連絡ください。 なお、掲載情報は発表当時のものとなりますので最新の情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。

Advertisement
URLをコピーしました!