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人口減少と高齢化が進む日本で、空き家問題が臨界点を迎えようとしています。総務省の試算では2040年に空き家率が30%を突破する見通しとなる中、物件を所有する高齢者、相続に直面する次世代、行政対応に奔走する地方自治体、生活への影響を受ける周辺住民—これら関係者が直面する多層的な課題の実態を取材します。
空き家問題解決への道筋は、『住宅の連鎖(チェーン)』を循環させること—自治体における実効性のある取り組みに注目していきます。
前回(vol2)、横浜市の「行政・民間・地域」が一体となる共創の力に焦点を当てた取り組みをご紹介しました。
『住宅の連鎖(チェーン)』を回していく 自治体”空き家対策最前線” vol.2 横浜市「所有者に寄り添い、『共創』で挑む横浜モデルの全貌」|property technologies | NEWSCAST : https://newscast.jp/news/3039700
前々回(vol1)、さいたま市の空き家問題の「発生予防」に焦点を当てた取り組みと合わせてお読みください。
『住宅の連鎖(チェーン)』を回していく 自治体 ” 空き家対策最前線 ” Vol.1 さいたま市「住民の意識を変える3つのトリガー」|property technologies | NEWSCAST : https://newscast.jp/news/4405805
本記事(vol.3)では、町田市の「空き家対策」における具体的な戦略と実践について解説します。町田市がどのように民間事業者と連携し、空き家を再び市場へと戻す「不動産流通」のサイクルを構築しているのか、その合理的なアプローチに迫ります。今回の取材にあたり、町田市 都市づくり部 住宅課の青木係長、鈴木係長、加賀爪主任、橋本主任にご協力をいただきました。
1.空き家について正しく知ろう
空き家の定義
総務省「住宅・土地統計調査」上では、空き家は以下のとおり定義されます。
①「売却用の空き家」は、不動産市場で売却活動が行われている物件です。
②「賃貸用の空き家」は、賃貸市場で流通しており、入居者を募集中の物件です。
③「二次的住宅」は、別荘やセカンドハウスなど、主住居以外の目的で所有される住宅です。
④「売却・貸用及び二次的住宅を除く空き家」は、で、活用予定がない等の住宅です。
この図は、上記①~④の空き家に加え、現在は居住中ながらも将来空き家になる恐れのある「空き家予備軍(⑤)」を加えて、その関係性をまとめました。それぞれの空き家が、所有者、地域住民、行政といった関係者とどう結びついているのかを視覚的に示しています。

なお、各自治体で実務上扱う「空家等対策の推進に関する特別措置法(国交省)(以下、空家特措法)」上では、以下のとおり定義されます。
①空家等(基本的な定義):継続的に人が住んでおらず、事業などにも使われていない建物とその敷地全体を指します。
②管理不全空家等:管理が不十分で、このまま放置すると後述の「特定空家等」になるおそれがある状態の空き家です。
③特定空家等:周辺の生活環境に悪影響を及ぼすおそれのある空き家です。以下のいずれかに該当すると指定されます。
危険:倒壊や建材の落下など、保安上危険な状態
不衛生:ごみの放置や害虫の発生など、衛生上有害な状態
景観阻害:管理されず、著しく景観を損なっている状態
その他:立木の越境や不審者の侵入など、周辺の生活環境を脅かす状態
2. 【現状】 同時進行する「人」と「家」の老い
町田市における空き家は、特定の地域に集中するのではなく、市内に広く点在しているのが現状です。町田市の分析によると、空き家の発生要因は、駅からの距離などの「立地条件」よりも、「建築時期」による影響のほうが大きいようです。
かつて同時期に開発・分譲された住宅地において、住民の世代交代と建物の老朽化が同時に進行する——いわば「『人』と『家』が共通して老いのタイミングを迎える」というこの現象は、同市に限らず、多くの都市が直面する課題でもあります。
3. 【予防】 「空き家予備軍」への早期アプローチと相談体制
空き家が発生してから動くのではなく、発生を未然に防ぐ。町田市が注力するのは、相続はもちろん、高齢者の施設入所や長期入院を見越した「空き家予備軍」への啓発です。加賀爪主任は「実際に、相続前の段階で空き家化しているケースは多い」と、現場の肌感覚を語ります。専門家の知見を身近に:
弁護士や税理士、宅建士らと協定を結び、毎月2回の無料相談会を開催。複雑な相続問題や税務を発生前から整理できるこの体制は、2023年度に25件、2024年度には15件の個別相談実績を上げています。また、直近で行われた「家族と考える住まいの終活」セミナーは市民の関心が高く、予約時点で35組を集めるなど、早期啓発のきっかけ作りの場としての手応えを感じています。生活導線への出店:
特筆すべきは東急株式会社との連携です。南町田グランベリーパーク内に相談窓口(住まいと暮らしのコンシェルジュ)を置く同社と連携することで、市民が日常生活のついでに「将来の住まい」を相談できる環境を構築。行政への相談に対する心理的ハードルを下げ、潜在的な不安を顕在化させる仕掛けを作っています。この連携による相談実績は、2023年度が45件、2024年度も38件と、安定したニーズの掘り起こしに繋がっています。
4. 【流通】 「活用」ではなく「循環」を目指す合理性
空き家対策といえば「リノベーションしてカフェや交流拠点に」といった事例が注目されがちですが、町田市の戦略は極めて現実的かつ理にかなったものです。
同市が重視するのは、「既存の用途(居宅)として不動産市場に戻すこと」と青木係長は話します。状態の良い物件は中古住宅として次世代へ繋ぎ、老朽化した物件は解体工事助成をご利用いただくなどして更地化し、ビルダーの手によって新たな住まいへと再生させる。この「不動産流通」のサイクルを回すことが、街の持続可能性を高める最短ルートであると考えています。
5. 【管理】 負のインセンティブを活かした「指導」のあり方
一方で、放置され管理状況が悪化している住宅に対しては、法的な指導を徹底しています。ここで大きな転機となったのが、2023年12月の法改正により新設された「管理不全空家等」という枠組みです。
鈴木係長はこの意義について次のように語ります。 「これまでの『特定空家等』は、建物の崩壊など切迫した危険がある状態を想定した制度でした。しかし、『管理不全空家等』という枠組みができたことで、放置すれば危険な状態になる住宅に対して、より早い段階で行政指導を行うことができるようになりました。市民感覚で問題視されるような、管理が行き届いていない空き家に対しても、きちんと指導できるようになった点で、その意義は非常に大きいと考えています」
町田市ではこの新たな制度を背景に、所有者へ実効的な指導を行うとともに、制度の「丁寧な説明」を徹底しました。単なる是正勧告にとどまらず、放置し続けることで固定資産税の特例が解除されるといった「所有者にとっての経済的な不利益」を明確に提示。このアプローチが、ある事例では停滞していた親族間の合意形成を促し、制度施行から短期間で既に5件の管理不全空家等の解消(修理・撤去)を実現しています。
6. 【展望】 住まいの連鎖(チェーン)を途切れさせないために
町田市の取り組みは、行政の力だけで完結するものではありません。民間事業者のノウハウと、市民一人ひとりの「早めの備え」が組み合わさって初めて、住宅の連鎖は回り始めます。
「空き家問題は、誰もが当事者になり得る」——。この認識を市民と共有しながら、町田市は今日も、街の「新陳代謝」を促すための仕組みづくりを続けています。
取材後記|「未来への負債」にしないために。所有者が今、できること
今回の取材を通じ、町田市が取り組む空き家対策の本質が、単なる建物の管理ではなく「街の新陳代謝」にあることを強く感じました。
「空き家は大切な資産。適切に管理されなければ近隣への深刻な影響を及ぼし、民事上の責任を問われる可能性もあります。まずは日頃の管理の重要性を再認識してほしい」
そう語る青木係長の言葉には、所有者の権利を守ると同時に、地域の安全を守るという行政官としての強い責任感が込められていました。一方で、所有者やその家族に対しては、「思い立ったが吉日。自宅の今後について少しでも考えたなら、まずは気軽に市の相談窓口を頼ってほしい」と、温かい眼差しで呼びかけます。
『人』と『家』が共通して老いを迎えるという現実。それは避けることのできない時の流れかもしれません。しかし、町田市のように行政、民間、そして専門家が手を取り合う場があるならば、その「老い」を「次世代への継承」へと変えることができるはずです。
空き家という「過去の記憶」を、新たな住まい手という「未来の活力」へ。町田市の挑戦は、私たちの住まいに対する向き合い方そのものを問い直しているようでした。
未来にむけて|空き家問題解決の鍵:「住まいのエンディングノート」
不動産価値の定期更新で空き家リスクを軽減
空き家問題の解決には、不動産所有者、相続人、自治体、周辺住民がそれぞれ主体的に行動することが重要です。特に所有者は、現在居住中であっても将来的に空き家となる可能性を考え、不動産の資産価値を正確に把握しておくべきです。例えば市場価値5,000万円の物件であれば、その価値を認識し、適切な管理や処分を考えるはずです。

この問題に対処するために有効なのが「わたし(たち)の住まいのエンディングノート」を作成することです。これは通常のエンディングノートと異なり、不動産に特化した情報を整理するものです。不動産基本情報シート(所在地、面積、境界、権利関係、ローン状況、資産価値)、関連書類リスト(登記簿、固定資産税納付書、設計図面などの保管場所)、維持管理情報(管理会社、自治会、修繕履歴)などを記録します。特に『資産価値』の項目は最も重要な情報です。これにより、将来の相続がスムーズに進み、空き家発生リスクを低減できます。

さらに重要なことは、資産価値の定期的な更新です。公示価格やマンション価格は年々変動しており、特に最近は上昇傾向にあります。数年前に確認した価値では不十分で、定期的な見直しが必要です。「投資商品」ではなく「実需商品」だからこそ、正確な価値を把握しましょう。
資産価値を知るには、不動産仲介会社に査定を依頼するのが一般的な方法です。立地や条件によりますが、数日で市場流通価格の結果が得られます。
また、Web上で資産価値を知ることも可能です。例えば、AIを活用した査定サービス『KAITRY』などを利用すれば、マンションの場合は、マンション名と基本情報(広さ、間取り、階数)を入力するだけで、簡単に資産価値を知ることができます。戸建ての場合は、現在「戸建住宅用」に同サービスを開放していないため下記までご連絡頂けますと知ることができます。
自宅(マンション)の資産価値を知りたい場合はこちら : https://kaitry.com/
自宅(戸建住宅)の資産価値を知りたい場合はこちら : https://kaitry.com/inquiry
法的権限だけでなく、民間の専門知識と行政の公共性を組み合わせた「本当の意味での公民連携」こそが、複雑化する現代の地域課題解決の要諦であるのではないでしょうか。今後も当社グループは、空き家問題の解決を図り、地域社会へ貢献できる持続可能な取り組みを広げてまいります。
(編集・執筆/property technologies 永江 直人)
適用に際しての具体的な注意点
・上記は令和7年12月末時点の適用法令・通達等に基づき記載しております。
・上記事例等は一例であり実際に適用する場合にはご自身が適用要件を満たしているか専門家等にご確認の上適切にご対応頂きますようお願い致します。
・本記事の記載内容にあてはめて適用することを保証するものではありませんのでご留意願います。
株式会社property technologies(プロパティ・テクノロジーズ)について
【公式】株式会社property technologies | property technologies Inc. : https://pptc.co.jp/
「UNLOCK YOUR POSSIBILITIES. ~テクノロジーで人生の可能性を解き放つ~」というミッションを掲げています。年間36,400件超の不動産価格査定実績やグループ累計約15,100戸の不動産販売で培ったリアルな取引データ・ノウハウを背景に、「リアル(住まい)×テクノロジー」で実現する「誰もが」「いつでも」「何度でも」「気軽に」住み替えることができる未来に向け、手軽でお客様にとって利便性の高い不動産取引を提供しています。
<会社概要>
会社名:株式会社property technologies
代表者:代表取締役社長 濱中 雄大
URL:https://pptc.co.jp/
本社:東京都渋谷区本町3-12-1 住友不動産西新宿ビル6号館12階
設立:2020年11月16日
上場:東京証券取引所グロース市場(5527)
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