立命館大学経済学部・寺脇拓教授とゼミ生22名は、「アップサイクル」の推進に向けて「規格外野菜を積極活用する倉庫カフェ」の価値を計測する研究活動に取り組んでいます。そのデータ収集のため、2025年11月29日(土)・30日(日)、滋賀県栗東市のWEST倉庫スタジオにて、規格外野菜や見切り品を活用したメニューを提供する倉庫カフェイベント「VEGGIE GARAGE」を開催しました。イベントでは、自動車用の巨大な倉庫をカフェ空間として活用し、キッチンカーでおからこんにゃくのカツを使ったヴィーガンカツカレーや規格外サツマイモを使ったヴィーガンスイートポテトなどを販売しました。同時に開催したマルシェでは、規格外の野菜や滋賀県に縁のあるアップサイクル商品の販売も実施しました。学生たちはイベント参加者を対象にアンケート調査を実施し、そのデータから「規格外野菜を積極的に活用する倉庫カフェ」で提供されるコーヒーに対して追加的に支払っても良いと思う金額(支払意思額)を分析します。また、イベント開催と並行して、滋賀県内の自然派カフェと倉庫カフェを紹介する冊子を作成して広く配布するほか、この調査研究に必要な資金を得るために「CAMPFIRE」にてクラウドファンディングを実施しています。
<アップサイクル>
捨てる予定のものや不要なものに手を加え、より価値の高いものにアップグレードして再利用すること

VEGGIE GARAGEのカフェ空間
■活動の背景
寺脇拓ゼミは2025年度の春学期、滋賀県栗東市にある倉庫カフェ「THE HIDEAWAY FACTORY」を対象に、倉庫をカフェにアップサイクルすることで生み出される社会的な便益(来客者の満足感を金銭評価したもの)を計測しました。その結果、その便益は年間約1104万円と推定され、倉庫のアップサイクルは大きな価値を生み出すことを明らかにしました。この研究成果を踏まえ、倉庫カフェで規格外野菜を使ったメニューを提供すれば、アップサイクルの融合によりその価値はさらに高まるものと期待し、その仮説の検証に取り組む「規格外野菜×倉庫カフェによるアップサイクル推進プロジェクト」を同年秋学期に立ち上げました。
■活動の内容
寺脇拓ゼミは「規格外野菜を積極活用する倉庫カフェ」の価値を計測するため、2025年11月29日(土)・30日(日)に、滋賀県栗東市のWEST倉庫スタジオでアップサイクルをテーマとするカフェイベント「VEGGIE GARAGE」を開催しました。初日に23組、2日目に35組が訪れ、延べ100人以上の方に規格外・見切り品の野菜メニューを非日常的な倉庫空間で楽しんでいただきました。イベント参加者を対象としたアンケート調査では、2日間で合計92人から回答をいただくことができました。
<VEGGIE GARAGEの概要>
●日時:2025年11月29日(土)・30日(日)11時~16時
●場所:WEST倉庫スタジオ(ウェスト草津栗東店):滋賀県栗東市小柿8丁目8-6
●内容:
(1) 自動車用の巨大な倉庫に椅子とテーブル、そしてキッチンカーを配備し、車やバイクも展示して、インダストリアルな雰囲気を持つ倉庫カフェを展開
(2) 規格外野菜・見切り品を活用したカフェメニューを販売
① おからこんにゃくのカツを使ったヴィーガンカツカレー
② おからこんにゃくと規格外トマトを使ったヴィーガンピザ
③ 規格外サツマイモを使ったヴィーガンスイートポテト
④ 規格外イチゴや廃棄間近のレスキューバナナを使った豆乳スムージー
(3) うつみ農園、ミモザファームの野菜を販売
(4) 滋賀県に縁のあるアップサイクル商品を販売
① 近江野菜ぴくるす:滋賀県産の規格外野菜・余剰野菜を活用したピクルス
② 琵琶湖グラス:琵琶湖の湖岸に流れ着くガラスを使ったアクセサリーや雑貨
③ドライベジタブル:長浜市産の新鮮な野菜のみで作られる乾燥野菜
④ スリムペンケース らうらうじ -second hose-:規格外の消防用ホースから作られるペンケース
(5) 滋賀県内の自然派カフェと倉庫カフェを紹介する冊子「自然派カフェと倉庫カフェ~滋賀で生まれるアップサイクルストーリー~」(A5サイズ、フルカラー、12ページ)を配布

イベントの様子

キッチンカー

販売したヴィーガンカツカレー

滋賀の自然派カフェと倉庫カフェを紹介する冊子

メンバー全員の集合写真
分析の結果、倉庫カフェのコーヒーに対して人々が「追加的に」支払っても良いと思う金額は47円、規格外野菜を積極活用するカフェのコーヒーについては約50円と計測されました。それは例えば普通のカフェのコーヒーが500円であるときに、倉庫カフェであれば人々は547円まで、規格外野菜を積極活用するカフェであれば550円まで支払ってもよいと考えていることを意味します。従って両方の特性を備えた「規格外野菜を積極活用する倉庫カフェ」であれば、597円までの支払意思額が期待できます。

支払意思額の計測結果
今後、上記の支払意思額が、性別や年代など個人の属性によってどのように変わるのかを分析する予定です。最終的には得られた成果を報告書にまとめ、ゼミのホームページ上で公開します。
■クラウドファンディングの概要
●タイトル:アップサイクルを推進!学生が開く規格外・見切り品活用メニューの非日常倉庫カフェ!
●期間:2025年11月8日(土)~2025年12月21日(日)
●目標金額:30万円
●URL:
https://camp-fire.jp/projects/899890/view
■寺脇拓ゼミの概要
●研究テーマ:市場で直接取引されないモノやサービス(非市場財:自然環境、食品安全、歴史文化財など)の価値を計測し、それらを含めた社会の在り方を考える。
●地域連携・課題解決型プロジェクト:3回生の秋学期開講科目「演習III」の中で、学んだ知識を使って実社会の課題に応える集団的な研究活動を行う。
●URL:
https://terawaki-lab.com/
