(ハワイ州、ホノルル)- ポリネシア航海協会(PVS)は、エルニーニョ現象および気候変動の影響により西太平洋地域で気象リスクの高まりが確認されたことを受け、「モアナヌイアケア環太平洋航海」の西太平洋航路における航海計画を見直すと発表しました。これに伴い、航海全体のスケジュールは約1年間延長され、日本への寄港は2028年に変更される見込みです。
PVSは、米国海洋大気庁(NOAA)から提供されるデータをもとに、エルニーニョ現象の進行状況について継続的かつ詳細な調査・分析を行ってきました。NOAAの国立気象局 気候予測センター(Climate Prediction Center)が7月上旬に公表した最新の予測は、2027年春までエルニーニョ現象が継続する確率は97%、2026年10月から12月にかけて非常に強いエルニーニョとなる確率は81%とされています。また、今回のエルニーニョは、過去75年間でも最大級の規模となる可能性が極めて高いと予測されており、西部北太平洋では危険な気象や海象の発生リスクが高まることが懸念されています。
PVSのCEOであり、伝統航海師(マスターナビゲーター)のナイノア・トンプソンは、気候予測センターの予報担当者と緊密に連携しながら、最新の気候予測について協議を重ねてきました。予報担当者は、「航海に適した風が期待できないだけでなく、台風の発生リスクも非常に高まります。さらに、海洋から放出される熱によって対流活動が活発化し、雷雨や落雷など、航海の安全に影響を及ぼす気象条件が発生する可能性が高まります」と説明しています。これを受け、トンプソンは次のように述べています。「私たちは、航海先を決定するにあたり、あらゆるリスクを総合的に評価するための安全基準とチェックリストに基づいて慎重に判断しています。」
当初の航海計画では、伝統航海カヌー「ホクレア(Hōkūleʻa)」と「ヒキアナリア(Hikianalia)」は、2027年に日本最北端の北海道まで航海する予定でした。しかし、乗組員の安全を最優先に考慮し、PVSは両カヌーを引き続き太平洋南半球で航海後、2028年に北東アジアへ向かうことを決定しました。現在、両カヌーは2025年11月より、アオテアロア(ニュージーランド)に滞在しています。
今回の航海計画の見直しにあたり、トンプソンは次のように語っています。「私たちが進むべき道は、自然が教えてくれます。自然が航海を許し、その時が来たと示してくれたときに、私たちは海へと出るのです。私たちが50年にわたり航海を続けてこられたのは、常に自然を最良の導き手として尊重し、その教えに従ってきたからです。今回の航海計画の見直しも、『延期』や『遅れ』ではありません。自然の声に耳を澄ませ、その判断を受け入れ、謙虚な気持ちで次の航海の機会を待つことこそが、伝統航海の精神であると私たちは考えています。特に今は、極端な気象状況と呼ぶべき厳しい環境にあるからです。」
今後17か月間、両カヌーは2026年10月にフィジーで開催される、国連気候変動会議(COP)に先立つPre-COP国際海洋・気候会議に参加するほか、アオテアロア(ニュージーランド)、クック諸島、フランス領ポリネシアを再訪する予定です。さらに2027年には、アメリカ領サモア、サモア、トンガ、メラネシア地域、ミクロネシア地域への寄港を計画しています。今回の航海計画の変更は、航海を中断するものではありません。むしろ、ホクレアとヒキアナリアを迎える太平洋各地の地域社会や教育機関との文化交流を深め、教育プログラムの拡充や気候変動に対する協働の取り組みを促進する重要な機会となります。2028年初頭には、両カヌーはミクロネシアを出航し、フィリピン、台湾、日本、韓国へ向けて航海を続ける予定です。
PVS CEO, 伝統航海師(マスターナビゲーター)ナイノア・トンプソンからのビデオメッセージ
2027 セイルプランアップデート
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日本の皆様へ
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改訂航海スケジュール(2026年7月時点)

2026年
• 9月中旬~10月上旬:アオテアロア(ニュージーランド)からフィジーおよび太平洋諸島
• 9月下旬~10月中旬:フィジーおよび太平洋諸島
10月5日~8日:フィジーで開催されるPre-COP(国連気候変動会議事前会合)に参加
• 10月中旬~11月10日:フィジーからアオテアロア(ニュージーランド)
• 2026年12月~2027年2月:アオテアロア(ニュージーランド)北島・南島一周航海
2027年
• 1月~2月:アオテアロア(ニュージーランド)北島・南島一周航海継続
• 2月~4月:アオテアロアにてドライドック(船体整備)
• 4月下旬(予定):アオテアロアからクック諸島へ向けて出航
• 5月~9月:ポリネシア地域
(クック諸島、フランス領ポリネシア、アメリカ領サモア、サモア、トンガ、その他の島々)
• 10月~11月上旬:メラネシア地域
• 11月上旬~2028年1月上旬:ミクロネシア地域
2028年
• 1月:パラオ(ミクロネシア)
• 2月:フィリピン
• 3月:台湾
• 4月~8月:日本、韓国
今回発表した改訂航海計画は現時点での予定であり、NOAA(米国海洋大気庁)による最新の気候予測や地域ごとの気象予報、海洋状況の変化を踏まえ、今後も必要に応じて見直し・調整が行われます。 古来よりポリネシアの航海師たちが受け継いできたように、今後もすべての重要な航海判断は、自然の変化を注意深く観察し、乗組員と航海カヌーの安全を最優先に行われます。
「もはや『平年どおり』というものは存在しません。エルニーニョ現象に加え、気候変動、そして熱と二酸化炭素を大量に蓄えた海洋が影響し合うことで、気象パターンはこれまで以上に予測が難しくなり、伝統航海にとっても危険性が高まっています。そのため私たちは、自然が許す範囲の中で航海計画を柔軟に調整し続けなければなりません。私たちの使命は、これまで同様に乗組員と航海カヌーの安全を守ることです。伝統航海は、自然を観察し、その声に耳を傾け、常に謙虚であることを教えてくれます。私たちはスケジュールを優先するのではなく、海が『安全に航海できる』と教えてくれるタイミングで航海に出るのです。寄港を予定している各地域の皆さまの温かいご理解とご支援に、心より感謝申し上げます。」とトンプソンは述べています。
日本語資料・参考リンク
ホクレア公式ウェブサイト(ハワイ州観光局サイト内): https://www.allhawaii.jp/hokulea/
“Way of the Navigator” 動画(日本語字幕): https://www.youtube.com/watch?v=sueOe8uJIag

ポリネシア航海協会
ポリネシア航海協会について
1973年にハワイで設立されたPVSは、伝統的なポリネシア航海術の保存と継承を目的とする非営利団体です。コンパスなどの計器を一切使わず、星や太陽の動き、波や風の変化などによるナビゲーションをもとに海を渡る伝統航海術を用いて、航海カヌーにより1976年にハワイ- タヒチ間の航海に成功し、ハワイアンの先祖たちが偶然ハワイに漂流したという説を覆し、彼らが航路を理解し意図的にハワイにたどり着いたことを証明しました。その後、これまで50年近くに渡り世界中の海を航海し続けています。ホクレアとヒキアナリアを通じて太平洋のコミュニティを結び、環境保護や文化的誇り、そして「地球という一つの島の乗組員である」という意識を世界に広めています。

ポリネシア航海協会
モアナヌイアケア環太平洋航海について
モアナヌイアケア環太平洋航海は、伝統航海カヌー「ホクレア」の50年間の歴史における15回目の主要航海です。ホクレア誕生の原点にある「探究」の精神―新たな発見や文化・伝統の再興、そして“島としての地球”とのつながりを再生するという理念を受け継ぎながら、本航海はさらにその価値観を深めています。世界一周航海を通じて得た学びをもとに、「探究」や「理解」にとどまらず、「マラマ(思いやり)」と「クレアナ(責任)」を軸に据え、持続可能な未来に向けた選択と行動へとつなげていくことを目的としています。約4年半にわたり太平洋を巡る本航海は、単なる航海ではなく、地球の未来そのものを目的地とする挑戦であり、次世代へより良い世界を引き継ぐためのグローバルなムーブメントです。
