東京大学や国立成育医療研究センターなどの研究チームが、約10万年前のジャワ原人が現代人と同様に未発達な状態で赤ん坊を出産し、集団で協力して子育てを行っていた可能性が高いとする研究成果を発表した。この発見は、人類がいつから現代人のような難産や共同育児を経験するようになったのかという進化の謎を解き明かす重要な手がかりとなる。
チンパンジーなどの類人猿の赤ん坊は比較的早熟であり、生後すぐに自力で母親の毛皮にしがみつくことができる。一方で、人間の赤ん坊は生後数か月にわたって首がすわらず、歩き始めるまでに約1年を要する。この長期にわたる未発達な状態は生理的早産と呼ばれている。人類が直立二足歩行を始めたことで骨盤の幅を過度に大きくできなくなり、胎児の脳が大きくなりすぎる前に、未熟な状態で出産せざるを得なくなったことが主な原因とされている。しかし、この生理的早産が進化の過程のどの段階で生じたのかを化石から直接証明することは極めて困難であった。
研究チームは、現代の乳児に見られる変形性斜頭という現象に着目した。これは、首がすわらない柔らかい頭部の赤ん坊をあおむけに寝かせることなどで生じる頭骨のゆがみである。研究チームがジャワ原人の頭骨化石を詳細に解析した結果、地層の圧力などによるものではない、横方向への強いゆがみが確認された。このゆがみは現代人の乳児に見られる変形性斜頭と同様の特徴を持っており、ジャワ原人の赤ん坊も頭が柔らかく、首がすわらない未熟な状態で生まれていたことを示している。
東京大学の海部陽介氏らは、ジャワ原人が直面した未発達な赤ん坊の出産は、母親ひとりの力だけで子育てをすることを困難にしたと指摘している。赤ん坊を保護し育てるためには、父親の育児参加や集団内での協力行動が不可欠となる。つまり、頭骨のゆがみは単なる形態の変化を示すだけでなく、産婆のような出産時のサポートや共同育児といった、社会的な協力関係がすでにジャワ原人の時代から築かれていたことを示す「人間らしさの刻印」と言える。今回の成果は、人類特有の社会性や行動様式がどのように形成されてきたのかを理解する上で、画期的な進展をもたらした。
