2026年5月27日(水)、大分県由布市湯布院町のENOWA FARMにて「Honda Sun × ENOWA FARM LAB」プレスプレビューが開催されたことをお知らせします。

「誰もが関われる農業」を、湯布院から 「Honda Sun × ENOWA FARM LAB」プレスプレビューを開催
「Honda Sun × ENOWA FARM LAB」は、障がい者雇用やものづくりの現場で培ってきたホンダ太陽株式会社の工程設計・作業改善・治具開発の経験を、ENOWA YUFUIN/ENOWA FARMが取り組む農業・食・宿泊体験の現場に生かし、多様な人が参加しやすい農業の形を検証していくプロジェクトです。
本プレスプレビューは、ホンダ太陽株式会社を主催とし、ENOWA YUFUIN/ENOWA FARMの協力のもと実施されました。当日は雨の中、報道関係者やプロジェクト関係者がENOWA FARM内のビニールハウスに集まり、ホンダ太陽とENOWAが連携して進める実証拠点の概要が紹介されました。
会場では、養液栽培設備、作業補助治具、栽培予定の作物資料などが展示され、登壇者が実際の設備を前に、今後どのような検証を行っていくのかを説明しました。
■ホンダ太陽が培ってきた「作業を人に合わせる」考え方を農業へ
ホンダ太陽株式会社 代表取締役社長 山口 潤氏
冒頭、主催者を代表して挨拶したホンダ太陽株式会社 代表取締役社長の山口 潤氏は、まずホンダ太陽の歩みに触れました。

ホンダ太陽が培ってきた「作業を人に合わせる」考え方を農業へ(ホンダ太陽株式会社 代表取締役社長 山口 潤氏)

ホンダ太陽株式会社 概要
ホンダ太陽は、1981年に本田技研工業株式会社と社会福祉法人太陽の家の共同出資により設立されました。その原点には、太陽の家を創設した中村 裕博士と、本田技研工業創業者の本田 宗一郎氏との出会いがあります。
山口氏は、ホンダ太陽がこれまで障がいのある人の雇用拡大と自立促進に取り組み、ものづくりの現場で作業工程や道具を工夫してきたことを紹介しました。
「私たちがこれまで積み上げてきた知見を、農業という社会の中で、誰もがより働きやすい形に変えていきたい。その思いから始める取り組みです」
今回のラボは、ホンダ太陽が製造現場で続けてきた「作業や環境を人に合わせる」という考え方を、農業の現場に応用するものです。山口氏は、完成形を見せる発表ではなく、これから現場で検証を重ねていくためのスタートであることを強調しました。
■ENOWA FARMを舞台に、農業・食・地域をつなぐ
ENOWA YUFUIN ファウンダー 平川 順基氏
続いて挨拶したENOWA YUFUIN ファウンダーの平川 順基氏は、ENOWAが大切にしている考え方として、ダイバーシティ、地域共創、そして食の場づくりに触れました。

ENOWA FARMを舞台に、農業・食・地域をつなぐ (ENOWA YUFUIN ファウンダー 平川 順基氏)
ENOWA YUFUINは、宿泊施設としてだけでなく、農業、食、地域との関係を一体で考える場所です。ENOWA FARMで育てられた作物は、レストランの料理や宿泊体験につながり、訪れる人に土地の背景や季節を伝える素材にもなります。
平川氏は、今回の連携について、ホンダ太陽とともに事業としての可能性を探りながら進めていく取り組みだと説明しました。
「まだまだ手探りの部分もありますが、ホンダ太陽さんと一緒に、事業としてどう育てていくかを伴走していきたい。大分だけ、湯布院だけにとどまらず、いろいろな場所へ広がっていくような活動にしていければと思います」
湯布院の農園で始まる実証を、地域の中だけで完結させるのではなく、将来的には他の地域にも広がる取り組みに育てたいという考えが語られました。
■構想の出発点は、農業の大変さへの実感と休耕地への思い
ホンダ太陽株式会社 相談役 鎌田 雅仁氏
トークセッションでは、まず本プロジェクトの構想段階から関わってきたホンダ太陽株式会社 相談役の鎌田 雅仁氏が、農業に関心を持ったきっかけを語りました。

構想の出発点は、農業の大変さへの実感と休耕地への思い(ホンダ太陽株式会社 相談役 鎌田 雅仁氏)
鎌田氏は三重県の茶農家に生まれ、子どものころから家の農作業を手伝っていたといいます。その中で、農作業の身体的な大変さを実感していました。
「子どものころ、家の農作業を手伝いながら、なぜこんなに大変なのだろう、もっと楽にできないものだろうかと感じていました」
その思いは、ホンダ太陽に赴任した後、再び強くなったといいます。会社の周辺に休耕地が多いことに気づき、「もったいない。何とか生かせないか」と考えるようになりました。
さらに、コロナ禍を経て、ホンダ太陽自身が新たな事業を持つ必要性も感じるようになったといいます。農業に挑戦したい思いはありましたが、ホンダ太陽は製造業であり、農業の経験がありません。加えて、農業を事業として成り立たせる難しさもありました。

農業に関心を持ったきっかけを語る、本プロジェクトの構想段階から関わってきたホンダ太陽株式会社 相談役の鎌田 雅仁氏

この構想が生まれた原点
そこで大きな転機となったのが、ENOWA YUFUINの平川氏、そして廣瀬 俊朗氏との出会いでした。平川氏から「一緒にやりましょう」と声をかけられたことで、大分の地で、農業と障がい者雇用、食や観光を結びつける構想が具体的に動き出したといいます。
鎌田氏は、Hondaの農業機器領域との連携可能性にも触れ、社会的にも重要な取り組みとして前に進めていきたいと語りました。
■人と人との縁が、プロジェクトを動かした
元ラグビー日本代表キャプテン/株式会社HiRAKU代表 廣瀬 俊朗氏
元ラグビー日本代表キャプテンで、株式会社HiRAKU代表の廣瀬 俊朗氏は、本プロジェクトが生まれるきっかけとなった人のつながりについて語りました。

人と人との縁が、プロジェクトを動かした (元ラグビー日本代表キャプテン/株式会社HiRAKU代表 廣瀬 俊朗氏)
廣瀬氏は、車いすラグビーや車いすマラソンなど、スポーツを通じて多様な人が活躍できる場づくりに関わってきました。その中で太陽の家やホンダ太陽を訪問し、障がい者雇用に取り組む現場に強い関心を持ったといいます。
その後、ENOWAとの縁が生まれ、現場で話をする中で、平川氏から「農業の中で、障がいのある人と何か新しい取り組みができないか」という話が出たといいます。廣瀬氏はその瞬間に「これは来た」と感じ、平川氏と鎌田氏をつなぐため、ホンダ太陽の工場見学を設定したと振り返りました。
廣瀬氏は、ラグビーのチームづくりにも重ねながら、このプロジェクトの面白さを語りました。ラグビーには多様なポジションがあり、それぞれの役割を持つ選手が一つのチームとして機能します。今回のプロジェクトも、ホンダ太陽、ENOWA、農業技術、食、地域、福祉など、それぞれの専門性を持つ人たちが集まり、新しい農業の形を試す取り組みだといいます。
「それぞれの専門性を持ち寄って、これまでにないものを作っていく。大分から始まって、どんどん広がっていく可能性があると思います」
さらに廣瀬氏は、作業手順やガイドラインが整えば、障がいのある人だけでなく、子どもや農業経験の少ない人も参加しやすくなるのではないかと話し、世代を超えて関われるプロジェクトへの期待を示しました。
■ENOWA FARMで実証する意味
作物が「どこで、誰によって、どう育てられたか」まで伝える
平川氏は、ENOWA FARMで実証を行う意味についても語りました。
ENOWAが目指しているのは、単に良い食材を使った料理を提供することではありません。その食材がどのような場所で、どのように育ち、どのような過程を経て食卓に届くのか。その背景を含めて、訪れる人に伝えることを大切にしているといいます。
今回のプロジェクトでは、そこに「誰が、どのように作業に関わったのか」という視点も加わります。
作物の味や品質だけでなく、作業に関わる人、作業しやすい環境づくり、地域との関係まで含めて伝えていく。ENOWA FARMは、それをレストランや宿泊体験の中で表現できる場所でもあります。
ENOWA YUFUIN エグゼクティブシェフのタシ・ジャムツォ氏も、ENOWA FARMで毎年新しい野菜に挑戦してきた経験を踏まえ、今回のプロジェクトによって食材づくりの幅がさらに広がることに期待を寄せました。

ENOWA FARMで毎年新しい野菜に挑戦してきた経験を踏まえ、今回のプロジェクトによって食材づくりの幅がさらに広がることに期待(ENOWA YUFUIN エグゼクティブシェフのタシ・ジャムツォ氏)
■車いすで作物に近づける設備を公開
京都・石割農園 石割 照久氏
会場内では、実際の養液栽培設備や試作治具を前に、京都・石割農園の石割 照久氏が、農業技術・栽培面から実証内容を説明しました。
石割氏は、会場に設置された設備について、障がいの有無で分けて考えるのではなく、同じ作業者として作業しやすい形を考えるためのものだと説明しました。
特に紹介されたのが、車いすを利用する人でも作物に近づきやすい栽培設備です。通常の露地栽培では、作物に目線を近づけるために腰を落とす必要があります。しかし、今回の設備では、車いすに座った状態でも、作物の近くまで目線を持っていくことができます。
また、ハウス内での栽培は、雨の日でも作業がしやすく、シフトも組みやすいという利点があります。石割氏は、作業しやすさとあわせて、農業として続けていくための採算性も見ていく必要があると説明しました。
「雨の日に作業できない農業ではなく、ハウスの中で安定して作業できる形にすれば、シフトも組みやすく、採算性にもつながっていくのではないか」
働きやすさだけでなく、事業として続けられるかどうかも、ラボで検証していく大切なテーマです。
■ホンダ太陽が試作した可動式の栽培設備
続いて、ホンダ太陽の担当者から、試作中の可動式栽培設備について説明が行われました。

ホンダ太陽が試作した可動式の栽培設備1
イチゴなどを二段式で栽培すると、収量を増やせる一方で、上段の位置が高くなり、作業しづらくなる課題があります。特に車いす利用者や身体的な制約のある人にとっては、高い位置での作業が大きな負担になります。
そこでホンダ太陽では、製造現場で使用しているフレームや治具設計の考え方を応用し、棚を動かせる試作品を制作しました。棚を可動式にすることで、作業する人に合わせた高さや位置で作業できるようにする構想です。
会場では、実際に可動する仕組みが紹介され、報道関係者もその動きに注目しました。製造現場での改善の考え方を、農作業に応用する試みです。

ホンダ太陽が試作した可動式の栽培設備2

ホンダ太陽のユニバーサル治具について

ホンダ太陽のユニバーサル治具を農業に応用
■イチゴを中心に、高付加価値作物の栽培も検討
作物選定について、石割氏は、採算性、育てやすさ、食べた人に喜ばれることを重視していると説明しました。

イチゴを中心に、高付加価値作物の栽培も検討(京都・石割農園 石割 照久氏)
実証の中心として想定されているのはイチゴです。イチゴは多くの人に親しまれる作物であり、完熟した状態で味わう価値も高く、ENOWAの食体験とも相性の良い作物です。
さらに、ライチ、アテモヤ、ヘーゼルナッツ、ブラッドオレンジ、果肉がピンク色のりんご「ルビースイート」、バニラビーンズ、コショウなど、高付加価値作物の可能性も紹介されました。

画像提供:ENOWA/AI生成イメージ。実際のENOWA FARMでの栽培状況、収穫時期、果実の形状・色味・サイズは、気候・土壌・生育環境により異なる場合があります。
石割氏は、バニラビーンズの香りを実際に報道関係者へ回しながら、栽培だけでなく、発酵や加工、香りの出し方まで含めた難しさと面白さを説明しました。
「食べていただく方を笑顔にする。作り手も笑顔になる。笑顔になると、おいしいものが自然とできる」
石割氏は、作物づくりを、作り手と食べ手の双方が笑顔になる営みとして語りました。
■山口氏「これからが本番」
事業化へ向けた検証へ
トークの最後に、山口氏は今後への考えを語りました。

この構想を受け継ぎ、今後どう育てていくのか
今回のプロジェクトは、構想を具体的な形にしていくための第一歩です。最終的には、会社として、事業として成立させていく必要があります。一方で、山口氏は、事業性だけを見るのではなく、ENOWAの農業・食の経験と、ホンダ太陽の作業改善の経験を重ねながら、お客様に喜んでもらえるものをつくることが大切だと述べました。
「これからが本番です。大分で始まるこの取り組みに、より多くの仲間を増やし、協力をいただきながら進めていきたい」
障がい者雇用の場を広げるだけでなく、農業として、地域の産業として、食や宿泊体験につながる事業として育てていく。そのための検証が、ここから始まります。
■登壇者が苗を植え、実証のスタートを示す
トークセッション後には、「Honda Sun × ENOWA FARM LAB」の始動を記念した植苗セレモニーが行われました。

登壇者が苗を植え、実証のスタートを示す
山口氏、鎌田氏、平川氏、廣瀬氏らが実際に苗を植え、石割氏が植苗のポイントを説明しました。苗を植える深さや土のかぶせ方など、イチゴ栽培では細かな作業の違いが生育に影響することも共有されました。
石割氏は、障がいのある人が作業する場合にも、身体的な障がいだけでなく、知的・精神的な特性を含め、一人ひとりに合わせた伝え方や手順の見える化が必要だと説明しました。
「こうやれば間違いなくできる、という形を一緒に考えていく。それが今回の目的です」
植苗を通じて、作業手順の見える化や作業しやすさの検証という、このラボのテーマも共有されました。
■質疑応答では、海外展開や雇用体制にも関心
質疑応答では、農業と福祉の連携が海外でどのように広がっているのか、また、今後どのような人員体制で実証を進めるのかといった質問が寄せられました。
海外の有機栽培や高付加価値農業の事例にも触れながら、石割氏は、イチゴの輸送性や完熟で提供することの価値、欧州での野菜栽培指導の経験などを紹介しました。
また、山口氏は、まずはホンダ太陽内の設備・作業改善などの専門人材を中心とした4名体制で実証を始めることを説明しました。ホンダ太陽には約400人の従業員がおり、そのうち約6割が障がいのある社員です。今後は、社内外の意見も取り入れながら、事業化や雇用の可能性を検討していく考えを示しました。
■地元テレビ局も、働きやすさの工夫に注目
当日の様子は、大分県内の民放テレビ局でも報道されました。

地元テレビ局も、働きやすさの工夫に注目
各局は、障がいの有無にかかわらず誰もが関われる農業を目指す取り組みとして紹介し、車いすでも作業しやすい70cmの作業台や、可動式の栽培設備など、現場に取り入れられた工夫に注目しました。
また、農業の担い手不足や高齢化が課題となる中で、ホンダ太陽が製造現場で培ってきたノウハウを農作業へ展開し、ENOWA YUFUINのレストランや宿泊体験につなげていく点も取り上げられました。
報道では、農業と福祉を組み合わせた取り組みとしてだけでなく、農業・福祉・観光を横断する今後の展開にも期待が寄せられました。
■湯布院から始まる、持続可能な農業と共生社会への挑戦

湯布院から始まる、持続可能な農業と共生社会への挑戦
「Honda Sun × ENOWA FARM LAB」は、農業の担い手不足、障がい者雇用、働きやすい作業環境づくり、地域資源の活用、食体験への展開を同時に見据えた取り組みです。
ENOWA FARMでは、有機農業や循環型農業にも取り組んでいます。地域で発生する牛糞、鶏糞、もみ殻、野菜残渣、おからなどを有機肥料として再利用し、収穫された作物をENOWAの料理や宿泊体験へつなげています。
今回の実証は、農作業の負担を減らし、多様な人が参加しやすい環境を整えるだけでなく、育てた作物が料理や地域の魅力としてどのように届くのかまで見ていくものです。
本プロジェクトは、現時点では完成形ではありません。これから試し、課題を見つけ、改善していくためのラボです。
身体的な負担が大きい作業も多い農業を、より多様な人が関われる形に見直していく。その取り組みが、湯布院の地で始まりました。
今後は、実際の栽培と作業検証を通じて、多様な人が関わりやすい農業の形を具体化していきます。
【開催概要】
名称:「Honda Sun × ENOWA FARM LAB」プレスプレビュー
日時:2026年5月27日(水)12:00~13:00
会場:ENOWA FARM(大分県由布市湯布院町川上丸尾452-2)
主催:ホンダ太陽株式会社
協力:ENOWA YUFUIN/ENOWA FARM
登壇・出席者:
山口 潤(ホンダ太陽株式会社 代表取締役社長)
鎌田 雅仁(ホンダ太陽株式会社 相談役)
平川 順基(ENOWA YUFUIN ファウンダー)
廣瀬 俊朗(元ラグビー日本代表キャプテン、株式会社HiRAKU代表)
石割 照久(京都・石割農園/Honda Sun FARMプロジェクト監修)
タシ・ジャムツォ(ENOWA YUFUIN エグゼクティブシェフ)
